2008年4月2日発表分

 昨日の米在庫統計は原油ベア、石油製品ブルの内容であった。原油はここ数ヶ月の最大の在庫増減要因の1つである輸入の大幅増加を受けて増加となった。一方、石油製品在庫は、需要の明確な減速が見られるものの稼働率が全く改善していないことから需要レベル対比での生産量が少なく、総じて市場予想比ブルな内容でった。ここ数週間の在庫統計をまとめれば、原油は輸入と全く元に戻らない稼働率を受けてベアな内容が続き、石油製品は需要が減少しているものの、稼働率の回復の遅れから結果市場予想比ブルな統計で細かい内容を見るとニュートラル、という状況が続いている。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に増加したことから、稼働率が小幅改善したものの大幅な在庫増加となった。ここ数週間の在庫増減の大きな要因となっている輸入の増加が在庫増加を促したと言える。これで在庫の増加は4週連続となった。生産は5,087KBD(▲16KBD)と小幅減少。輸入は全ての地区で増加したことから全体で10,287KBD(前週比+1,385KBD)となった。結果、総供給量は15,370KBD(前週比+1,369KBD,+9.6MBの在庫増加要因)となった。稼働率はP1,P3,P4で前週比▲8.8%、▲1.3%、▲2.8%と大幅に稼働率が低下した影響から、P2,P5の稼働率の改善はあったものの前週比+0.2%と小幅な改善にとどまった。いうまでもなく過去5年ベースでの最悪の稼働率である。引き続き過去5年の最低水準88.6%を大きく下回る82.4%という極めて低い稼働率が継続している。稼働率の改善は改善は▲0.2MBの在庫減少要因となる。供給量大幅増加、処理量の増加で在庫は前週比で+9.4MBの+9.3MB(先週の在庫増加は+0.1MB)となるが、実際は在庫は前週比+7.3MBの319.2MB(過去5年平均レベル309.5MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+1.4%であるが、今週は+2.3%の大幅増加となった。FSCは在庫増加・処理量略横ばいにより前週比+0.5日の22.2日となった。過去5年の平均である20.6日を大きく上回る水準であり、米国原油在庫の水準は十分と言っても言い過ぎではあるまい。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.5MB(前週比+264KB)となった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率の改善、得率の改善に伴う生産増加はあったものの、需要が大幅に増加したことから予想を大きく上回る在庫減少となった。生産は8,608KBDと先週から大幅に増加した。とはいっても過去5年の最高水準と平均のちょうど中間レベルの生産レベルであり、取り立てて生産量が多いわけでも、少ないわけでもない。輸入は前週比▲19KBDと略横ばいの944KBDとなった。結果、総供給は9,552KBD(前週比+50KBD、前週比で+0.4MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,162KBD(前週比+65KBD、過去5年平均8,981KBD、▲0.5MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,330KBD(前週比+214KBD)となった。この4週平均の需要増加率(+0.7%)は例年(前週比変わらず)を大きく上回るレベルであるが、依然として需要の前年比割れは継続しており、10週連続の前年比マイナスとなった。米需要は明確に減速している状態であると言ってよいが、引き続き季節性が壊れてしまうような需要の崩壊が見られているわけではない。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲0.1MBの▲3.4MBの在庫減少(先週の減少▲3.3MB)となるのだが、実際は▲4.5MBの大幅な在庫減少となった。在庫減少増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが減少、特にConventionalとRBOBの在庫減少が顕著である。この結果、FSCは24.5日と先週から▲0.7日と大幅に悪化したが、依然として過去5年の最高水準である24.1日を大きく上回る状態が続いており、ガソリン需給は引き続きタイトとはいえない。サブプライム禍の影響で需要が減少し始めており、今後のガソリン等の輸送需要(輸送需要は景気に直結)動向に更なる注意を払わねばならない統計である。先週と同様、市場予想比ではブルな内容であるが、絶対水準的には先週と同じくニュートラル〜ベアな内容であったと考えておくべきである。
 
 ディスティレート在庫は略予想通りの在庫減少となった。稼働率の改善を得率の悪化が相殺、輸入が比較的まとまって増加した一方、需要が横ばいであったことから在庫減少幅が先週から縮小している。生産は、稼働率が改善したが、得率が▲0.1%と小幅悪化したことから3,856KBD(▲2KBD)と小幅減少(略過去5年の平均レベル)。製品生産の内訳はULSDを除く製品で生産が減少している。輸入は前週比+80KBDの322KBDと大幅な増加となったが、過去5年の平均レベルは達していない。この結果、総供給は4,178KBD(前週比+78KBD、+0.5MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は前週比▲23KBDの4,205KBD(+0.2MBの在庫増加要因)と、前週比▲0.5%と例年の▲1.3%の需要減少率を下回っている。ガソリン同様季節性の影響が大きいと思うがかろうじて需要の崩壊には至っていない。全体のバランスでは前週比+0.7MBの▲1.4MB(先週の在庫減少は▲2.1MB)となるところであるが、略計算どおりとなる▲1.6MBの在庫減少となった。総在庫は109.7MBとなり、とうとう過去5年平均レベル111.0MBを下回るにいたった。在庫減少の内訳はULSDが+510KB、ディーゼルが▲809KB、ヒーティングオイルが▲1,330KBとなった(P1、P3地区での在庫減少が顕著)。在庫水準が過去5年平均を下回ったが、FSCも26.1日(前週比▲0.2日)と過去5年平均である26.4日を下回っている。但し4週平均需要が過去5年平均レベルトントンであることから、取り立てて在庫が少ない、と騒ぐレベルでもないように思う。今回の統計はディスティレートは市場予想比・絶対水準ともニュートラル・ブルな内容であったといえよう。