統計速報(2008年5月7日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア、ガソリンブル、ディスティレートニュートラル〜ブルな内容であった。クラックマージンの回復がままならない中引き続き石油製品供給は不安定なうえ、低迷していた需要、特にガソリンの需要が回復しており結果的に石油製品ブルな統計であったといえる。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が増加、稼働率が悪化したことから先週に続き市場予想を上回る大幅な在庫増加となった。これで3週連続の在庫増加となり、この時期は在庫が積み上がる時期であるため不思議はないが、稼働率の回復がままならない中での在庫増加でありいびつな形での在庫の増減が続いている。生産は5,099KBD(+1KBD)と殆ど変わらず。輸入は全ての地区で輸入が増加したことから全体で+413KBDの大幅増加となり全体で10,628KBDと、同じ時期の過去5年の最高水準10,863KBDと略同じ水準を維持している。結果、総供給量は15,727KBD(前週比+414KBD,+2.9MBの在庫増加要因)となった。稼働率はドライブシーズンを控えて上昇する時期であるが、原油価格の高騰の影響でクラックマージンの回復がままならず2種連続で悪化し、前週比▲0.4%となった。稼働率は地区毎に各々P1から、▲3.0%、▲0.5%、+0.6%、▲11.5%、+0.4%となっている。稼働率の悪化は+0.5MBの在庫増加要因となる。供給量増加、処理量の減少で在庫は前週比で+3.4MBの+7.2MB(先週の在庫増加は+3.8MB)となるが、実際は前週比+5.7MBの325.6MB(過去5年平均レベル318.5MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+0.5%であるが、今週は+1.8%と、先週に続き例年の増加ペースを大幅に上回る在庫増加となった。FSCは在庫増加・処理量減少で前週比+0.5日の21.8日となった。過去5年の平均である20.5日を大幅に上回る水準を維持しており、稼働率の回復が思わしくない中、原油在庫に関して家は十分な在庫があるといえる。もし例年通りの稼働率になったとしても20.6日分の在庫があり、過去5年の平均レベルをついに満たすに至った。原油に関して言えば中東やナイジェリアの生産不安はあるものの処理量が増加しないことから徐々に需給が緩和しつつあるようである。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は20.2MB(前週比+915KB)となった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫増加となった。稼働率の悪化、得率も悪化、需要はが大幅に改善、需要が増加したものの統計上は在庫増加となっている。生産は▲287KBDの8,677KBDと先週から大幅に減少。稼動率が季節性を無視して悪化した上に得率が前週比▲1.6%と悪化したことが影響した。輸入は前週比+109KBDと先週に続いて増加し、過去最高水準である1,152KBDを大きく上回る1,494kでとなった。結果、総供給は10,171KBD(前週比▲178KBD、前週比で▲1.2MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,263KBD(前週比+6KBD、過去5年平均9,085KBD、在庫増減要因とはならず)、直近需要ベースで9,311KBD(前週比+122KBD)となった。この4週平均の需要増加率(+0.1%)は例年(±0.0%)を上回るレベル。今週の需要で特筆すべきは2月からずっと前年比マイナスを続けてきたガソリン需要が小売価格自体は上昇しているものの、とうとう前年比プラスを回復したことである。米需要は2月以降前年比で明確に減速して来ていたが、米信用不安の後退や株価がもどりつつあることが交換され消費がもどってきている可能性が出てきた。もちろん今週の統計のみをとって需要が回復基調にあると断ずるべきではないが引き続き需要動向は細心の注意を払ってチェックして行く必要があろう。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲1.2MBの▲2.7MBの在庫減少(先週の減少▲1.5MB)となるが、実際は+0.8MBの在庫増加となった。在庫増加の内訳は、先週と打って変わってConventionalを除く全てのガソリンが増加しており、Blending Componentの増加が+3.3MBと顕著であった。ドライブシーズン入りして在庫の積み増しが始まる時期であるが、漸く在庫が増加した格好。この結果、FSCは22.9日と先週から+0.1日改善し、過去5年の平均水準である22.4日は上回っている。今週のみではあるが、価格上昇にも関わらず需要が増加した場合、ドライブシーズン中に在庫が不足、需給が逼迫する「需要低迷下の需給逼迫」という状況になる可能性が高い。今週は市場予想比ベアな統計であったものの、最も重要と思われる需要に関して減速が見られなかったことから中期的にブルな内容であった。来週以降の統計での需要動向に注目してゆく必要があるといえる。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫減少となった。生産が横ばいであったものの輸入がULSDを中心に減少、需要が減少したものの前週比小幅な在庫減少となった。生産は、稼働率が悪化したが、得率が+0.1%と小幅改善したことから4,239KBD(+1KBD)と先週れべるを維持できた。輸入は前週比▲86KBDの187KBDとULSDの輸入が大幅に減少。この結果、総供給は4,426KBD(前週比▲85KBD、▲0.6MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,188KBD(前週比▲69KBDの、+0.5MBの在庫増加要因)と、前週比▲0.1%と例年の+1.4%の需要増加率を先週に続き下回った。全体のバランスでは前週比▲0.1MBの+1.0MB(先週の在庫増加は+1.1MB)となるところであるが、計算とは裏腹に▲0.1MBの小幅在庫減少となった。総在庫は105.7MBとなり、過去5年平均レベル107.3MBを下回るレベルでの推移が続いている。在庫増加の内訳は先週大幅増加となったULSDが▲0.7MBと減少に転じた一方、ディーゼルが+0.5MB、ヒーティングオイルが+0.1MBとなった。FSCは25.2日(前週比+0.4日)と過去5年の最低水準である24.4日を上回り、過去5年平均レベルである26.1日を下回る水準。引き続き在庫は十分な状態とはいえない。今週の統計は予想対比・絶対値ベースともベアな内容であったが、在庫水準や需給状況を見るに先週同様中期的には依然として若干ブルな内容であったといえる。