統計速報(2009年7月22日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ニュートラル、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。ここ数週間、原油は過去5年レンジにFSCを収めるオペレーションが継続しており、これは上手に機能している。石油製品需要は、消費者のマインドに大きな影響を与える株価動向の影響を受けて不安定な推移となっている。しかし、輸送燃料として用いられるディスティレート需要は引き続き前年比大幅なマイナスが続いており、少なくとも景気回復に伴う輸送需要の改善が確認されているわけではない。秋口にかけての景気悪化(二番底付け)の裏づけはここにあるのだが、マインドの改善が長期にわたり継続するのであれば「虚が実に」なる可能性も否定できない(そこまで世界j経済の回復力が強いとは思えないが...)。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少したため、稼働率が低下したものの大幅な在庫減少となった。生産は5,176KBD(+5KBD)と過去5年の略下限での推移が継続している。輸入は9,203KBD(▲346KBD)とP3,P5での減少が顕著である。輸入はついに過去5年の最低水準を下回ることとなった。如何に米国の石油製品需要が低迷しているかが分かる。結果、総供給量は14,379KBD(▲341KBD、前週比2.4MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率は全ての地区で大幅に低下し、全体で85.8%(▲2.5%、前週比2.5MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲2.1%,▲2.0%,▲2.2%,▲3.6%,▲1.3%となっている。計算上在庫は前週比で+0.1MBの▲2.69MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲2.8MB)となるが、計算よりも減少幅は小さく▲1.8MBとなった。結果、在庫水準は342.7MB(▲1.8MB)となった。在庫はP5の減少が顕著で、稼働率が大きく低下したP3では反対に大幅な増加となっている。在庫量の変化はP1から順に、+0.9MB, ▲0.3MB, +1.6MB, ▲0.3MB, ▲3.8MB となった。FSCは22.6日(+0.4日)と稼働率要因で上昇。この結果、原油在庫の水準はFSCベースで過去5年レンジを上抜けしている。但し総じて原油在庫は適正なレベルが確保されていると言える。今週はSPRは変わらず。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は30.8MB(+0.0MB)と変化無しであった。統計としては略ニュートラルな内容であった。

ガソリンは生産が得率の改善で大幅に増加、輸入も増加したものの、需要が若干回復したことから略予想通りの在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+3.2%と改善したことから9,236KBD(+280KBD)となった。輸入は1,026KBD(+95KBD)と大幅に増加し、過去5年レンジの上限まで回復している。結果、総供給は10,262KBD(+375KBD、前週比2.6MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで10,262KBD(+375KBD、前週比2.6MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,175KBD(+31.5KBD, 前週比0.2MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,440KBD, 過去5年最高 9,626KBD, 過去5年最低 9,184KBD)となった。需要の前年比での減少率は小幅な水準に留まっており、ドライブシーズン中でもあり需要は比較的堅調な推移を続けている。今週は前年比ベースの需要の減少は▲1.82%とマイナスの状態が続いているが、前週比での変化率は+0.34%(例年+0.28%)と回復している。景気の先行きに対する不透明感は完全に払拭されていないが、ここ数週間の経済統計の好転に伴う株価の急速な上昇で消費者に買い安心感が広がっているようだ。但し株価の急騰に伴うマインド改善効果による需要の増加は、株価が下落した場合には剥落した場合、あるいはガソリン価格が急騰した場合にはなくなってしまう可能性が高いことから、引き続き株価動向は無視できない展開が続くことになると考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は+2.4MBの+3.8MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.4MB)となるが、計算を大きく下回る+0.8MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional84.3MB(+1.5MB)、Blending129.6MB(+5.0MB)となっている。この結果、FSCは23.5日(+0.0日)と先週に続き上昇し、過去5年の上限レンジを超えた状態が続いている。今後の需要に関しては引き続き経済統計、特に今月末の米GDPを受けた株価等の金融市場動向に振らされる展開になると予想している。統計としてはFSCの上昇もあって、先週に続きベアな内容であった。

ディスティレート在庫は市場予想通りの在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.7%と改善したことから4,052KBD(+18KBD)と先週から上昇。生産の内訳はULSD3,000KBD(▲3KBD)、ディーゼルオイル566KBD(▲12KBD)、ヒーティングオイル486KBD(+33KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準近辺。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされているが調整可能な範囲を超えてしまっており、生産調整しているようにも見受けられない。輸入は252KBD(+93KBD)と増加。基本、在庫水準が高すぎるため海外からディスティレートを輸入する必要性は殆どないのだが、米国内価格の上昇に伴い、アービトラージカーゴが流入したと見られる。この結果、総供給は4,304KBD(+111KBD、前週比0.8MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,304KBD(+111KBD、前週比0.8MBの在庫増加要因)、直近需要は3,298KBD(+18KBD, 前週比0.1MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,080KBD, 過去5年最高 4,181KBD, 過去5年最低 3,925KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲21.1%と先週と減少幅は略変わらず。前週比ベースでは+0.6%(例年±0.0%)とプラスが続いている。しかし、明らかに需要は停滞したままである。全体のバランスでは前週比+0.7MBの+1.2MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.6MB)となるところであるが、+1.2MBの在庫増加となった。総在庫は161MB(+1.2MB, 過去5年平均 123.6MB, 過去5年最高 131.1MB, 過去5年最低 118.4MB)となり、過去5年最高レベル131.1MBを遥かに上回っている。世界的にディーゼルオイルの在庫水準は高く輸送需要は低迷しているといって良い。当面は、原油価格が上昇する以外にディスティレートの買い材料はないが、株価の上昇等に伴うマインド改善効果で原油価格が上昇しており、当面はこの動きが続くと見られる。7月末の米GDP発表、8月初の米雇用統計を受けた金融市場動向、各国中央銀行の金融政策動向によって変動する通貨レートの動きに注目したいが、ファンダメンタルズの弱いディスティレートは頭重い推移が続くことになると考えている。製品毎の在庫の内訳はULSDが93.5MB(+10.3MB)、ディーゼルが20.8MB(▲4.1MB)、ヒーティングオイルが46.2MB(+2.3MB)。FSCは48.7日(+0.1日)となった。これは過去5年の最高水準である31.7日をはるかに上回るレベルであり、多過ぎであることはコメントする必要もないだろう。統計としては市場予想どおりであるが、統計自体は引き続き明確にベアな状態である。

 今回の米在庫統計は原油ニュートラル、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。ここ数週間、原油は過去5年レンジにFSCを収めるオペレーションが継続しており、これは上手に機能している。石油製品需要は、消費者のマインドに大きな影響を与える株価動向の影響を受けて不安定な推移となっている。しかし、輸送燃料として用いられるディスティレート需要は引き続き前年比大幅なマイナスが続いており、少なくとも景気回復に伴う輸送需要の改善が確認されているわけではない。秋口にかけての景気悪化(二番底付け)の裏づけはここにあるのだが、マインドの改善が長期にわたり継続するのであれば「虚が実に」なる可能性も否定できない(そこまで世界j経済の回復力が強いとは思えないが...)。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少したため、稼働率が低下したものの大幅な在庫減少となった。生産は5,176KBD(+5KBD)と過去5年の略下限での推移が継続している。輸入は9,203KBD(▲346KBD)とP3,P5での減少が顕著である。輸入はついに過去5年の最低水準を下回ることとなった。如何に米国の石油製品需要が低迷しているかが分かる。結果、総供給量は14,379KBD(▲341KBD、前週比2.4MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率は全ての地区で大幅に低下し、全体で85.8%(▲2.5%、前週比2.5MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲2.1%,▲2.0%,▲2.2%,▲3.6%,▲1.3%となっている。計算上在庫は前週比で+0.1MBの▲2.69MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲2.8MB)となるが、計算よりも減少幅は小さく▲1.8MBとなった。結果、在庫水準は342.7MB(▲1.8MB)となった。在庫はP5の減少が顕著で、稼働率が大きく低下したP3では反対に大幅な増加となっている。在庫量の変化はP1から順に、+0.9MB, ▲0.3MB, +1.6MB, ▲0.3MB, ▲3.8MB となった。FSCは22.6日(+0.4日)と稼働率要因で上昇。この結果、原油在庫の水準はFSCベースで過去5年レンジを上抜けしている。但し総じて原油在庫は適正なレベルが確保されていると言える。今週はSPRは変わらず。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は30.8MB(+0.0MB)と変化無しであった。統計としては略ニュートラルな内容であった。

ガソリンは生産が得率の改善で大幅に増加、輸入も増加したものの、需要が若干回復したことから略予想通りの在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+3.2%と改善したことから9,236KBD(+280KBD)となった。輸入は1,026KBD(+95KBD)と大幅に増加し、過去5年レンジの上限まで回復している。結果、総供給は10,262KBD(+375KBD、前週比2.6MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで10,262KBD(+375KBD、前週比2.6MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,175KBD(+31.5KBD, 前週比0.2MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,440KBD, 過去5年最高 9,626KBD, 過去5年最低 9,184KBD)となった。需要の前年比での減少率は小幅な水準に留まっており、ドライブシーズン中でもあり需要は比較的堅調な推移を続けている。今週は前年比ベースの需要の減少は▲1.82%とマイナスの状態が続いているが、前週比での変化率は+0.34%(例年+0.28%)と回復している。景気の先行きに対する不透明感は完全に払拭されていないが、ここ数週間の経済統計の好転に伴う株価の急速な上昇で消費者に買い安心感が広がっているようだ。但し株価の急騰に伴うマインド改善効果による需要の増加は、株価が下落した場合には剥落した場合、あるいはガソリン価格が急騰した場合にはなくなってしまう可能性が高いことから、引き続き株価動向は無視できない展開が続くことになると考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は+2.4MBの+3.8MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.4MB)となるが、計算を大きく下回る+0.8MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional84.3MB(+1.5MB)、Blending129.6MB(+5.0MB)となっている。この結果、FSCは23.5日(+0.0日)と先週に続き上昇し、過去5年の上限レンジを超えた状態が続いている。今後の需要に関しては引き続き経済統計、特に今月末の米GDPを受けた株価等の金融市場動向に振らされる展開になると予想している。統計としてはFSCの上昇もあって、先週に続きベアな内容であった。

ディスティレート在庫は市場予想通りの在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.7%と改善したことから4,052KBD(+18KBD)と先週から上昇。生産の内訳はULSD3,000KBD(▲3KBD)、ディーゼルオイル566KBD(▲12KBD)、ヒーティングオイル486KBD(+33KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準近辺。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされているが調整可能な範囲を超えてしまっており、生産調整しているようにも見受けられない。輸入は252KBD(+93KBD)と増加。基本、在庫水準が高すぎるため海外からディスティレートを輸入する必要性は殆どないのだが、米国内価格の上昇に伴い、アービトラージカーゴが流入したと見られる。この結果、総供給は4,304KBD(+111KBD、前週比0.8MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,304KBD(+111KBD、前週比0.8MBの在庫増加要因)、直近需要は3,298KBD(+18KBD, 前週比0.1MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,080KBD, 過去5年最高 4,181KBD, 過去5年最低 3,925KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲21.1%と先週と減少幅は略変わらず。前週比ベースでは+0.6%(例年±0.0%)とプラスが続いている。しかし、明らかに需要は停滞したままである。全体のバランスでは前週比+0.7MBの+1.2MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.6MB)となるところであるが、+1.2MBの在庫増加となった。総在庫は161MB(+1.2MB, 過去5年平均 123.6MB, 過去5年最高 131.1MB, 過去5年最低 118.4MB)となり、過去5年最高レベル131.1MBを遥かに上回っている。世界的にディーゼルオイルの在庫水準は高く輸送需要は低迷しているといって良い。当面は、原油価格が上昇する以外にディスティレートの買い材料はないが、株価の上昇等に伴うマインド改善効果で原油価格が上昇しており、当面はこの動きが続くと見られる。7月末の米GDP発表、8月初の米雇用統計を受けた金融市場動向、各国中央銀行の金融政策動向によって変動する通貨レートの動きに注目したいが、ファンダメンタルズの弱いディスティレートは頭重い推移が続くことになると考えている。製品毎の在庫の内訳はULSDが93.5MB(+10.3MB)、ディーゼルが20.8MB(▲4.1MB)、ヒーティングオイルが46.2MB(+2.3MB)。FSCは48.7日(+0.1日)となった。これは過去5年の最高水準である31.7日をはるかに上回るレベルであり、多過ぎであることはコメントする必要もないだろう。統計としては市場予想どおりであるが、統計自体は引き続き明確にベアな状態である。