震災の影響によるリスク回避の動き一巡

【商品市況概況】

「震災の影響によるリスク回避の動き一巡」

昨日の商品相場は軒並み反発した。日本の震災の影響を市場がとりあえず織り込み、原発問題もゆっくりとではあるが進捗(しかし事態は膠着)していることから、買い戻しが優勢となった。


エネルギーは原発問題の一服に加え、中東情勢の悪化が材料視された。現在、カダフィ政権が反政府勢力に対して優勢に戦線を展開しており、国際的な軍事介入の可能性が高まってきている。同地区での戦闘激化は海上輸送への懸念やサウジへの波及等、現物供給に関する懸念を想起させることから買い材料となる。


ベースメタルも買い戻しで上昇。震災の国際経済に与える影響が今のところは限定されるとの見方から、安値圏にあるメタルが買い戻された。特に日本向けのバッテリー需要増加が見込まれる鉛は大幅な上昇となっている。


貴金属は上昇。震災の影響によるリスク回避モードが一服、「予測可能な範囲内で」経済・金融市場が稼働する中では、貴金属は安全資産として物色されやすい。株の戻りもあってPGMも上昇している。穀物もファンド勢の買い戻しで上昇している。



「投機要因を除いた価格」

震災の影響で一気に市場はリスク回避モードとなっていたが、震災の被害や原発問題がこう着していることから、徐々に市場にリスクテイク能力が回復してきている。自国通貨回帰の動きも一服したようである。しかし、今回の震災を受けて、1つ分かったことがある。よく質問を受けることであるが、「投機の影響を除いた場合の価格」がどれぐらいか、だ。


震災の影響がどうなるか分からない中、実需ではない市場参加者は当然、保有するポジションを閉じる。もしそれが買いポジションであれば売却するし、売りポジションであれば買い戻す。市場の動きを見るに、一昨日でその動きはとりあえず終了したようだ。と、考えると原油(Brent)は110ドル、銅は9,000ドル、アルミは2,450ドル、銀は33ドル程度が、「現在の経済のファンダメンタルズから」正当化される価格、と考えることが出来る。比較的高い水準だと言えるだろう。


震災の影響で稼働が停止し、実需に影響を与えるのは多少の時間がかかる。今朝がた、GMが震災の影響で部材が調達できないので稼働を停止する、と報道されていた。比較的早い段階で影響が出ているが、震災発生から決断まで1週間を要している。今後、震災の影響で国際的に工場の稼働が低下する、という動きが出てくると見られる。この動きが拡大することによって経済活動に影響が見られる場合には、上記の「ファンダメンタルズによって正当化される価格」は変化することになるが、それがどの程度になるのかは、現在の材料だけでは判断がつきにくい。ガイトナー米財務長官や、バーナンキ議長も(被災地への配慮もあって)そういったコメントは控えている。


とはいっても原発の動向が世界の原子力発電の運営に影響を及ぼすことになるため、引き続き福島原発の動向には注目する必要があるだろう。早く解決して、被災地の復興に全力を注げる環境になって欲しいものだ。

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コモディティインデックス】
MRA CVIX(MRAコモディティ恐怖指数):34.5(+1.50)
MRA RMI(MRAレアメタルインデックス):322.45(+0.94)