ギリシャ不安の拡大続く

【商品市況概況】

ギリシャ不安の拡大続く」

昨日の商品市場は軒並み下落することとなった。欧州諸国が推進しているギリシャのデフォルト回避策が、デフォルトの回避に繋がらないのではとの見方が強まってることが、殆ど全ての商品にリスク回避の売りを促すこととなった。


エネルギーは大幅に調整。ギリシャ問題が深刻化する中、エネルギー市場でもポジションの解消売りが相次いでいる(ロング・ショート共解消)。CFTCのポジションに見る投機筋のポジションはWTIに関してはネット買い越しの状態であり、ポジション解消の中では下落圧力が強まることになる。需給がタイトであった欧州地区に関してもOPECバドリ事務局長の弱気な需要見通しを受けて若干の緩和が予想される。WTI/Brentスプレッドを拡大させながら両原油とも水準を切り下げる動きになると考える。ベースメタルは大幅に調整。中国の需要は引き続き旺盛であるものの(顕在需要ベース)、週末発表された中国の不動産価格が全ての都市で前年比上昇したことが嫌気されている。欧米の需要減少を如何に中国の需要が吸収できるかがメタル相場のポイントになるが、利上げが行われるのであればこの限りではない。貴金属も換金売りに押される形で下落している。「質への逃避バブル」で急速なペースで上昇していた金は他市場の調整に伴う換金売りに連れ安となった。プラチナも略同じ理由で金と下げ幅を同じくしている。銀やパラジウムといった商品性の強い商品も換金売りに押されている。
欧州問題と直接関係ないが、今晩のFOMCを控えてポジション調整が発生していることも事実だろう。FOMCでは効果が不透明ながら、ツイスト・オペの実施が予想されている。"




「備えあれば憂いなし」

市場は景気後退を織り込み始めたと言え、大幅な調整に備える必要が以前に比して強まってきたと考えられる。但し、回復するにせよ一時的な調整は必要であり、この調整を如何に「軟着陸」させられるかが大きなポイントとなるだろう。そのためには、足元の問題に適切な対応策を示し、ギリシャ問題がイタリア、スペインに波及しないよう、対策を行うべきである。具体的には欧州安定ファシリティの強化や、欧州銀行の資本増強である。過去の歴史を見るに金融危機時には銀行の公的管理が高い確率で発生していることから、(ルールを決めて)予防的に銀行に資本注入することも必要なのではないだろうか。
伝統的に欧州は「そもそも論」を前面に押し出す傾向が強いが、燃えさかる家を指さして「火災保険に入っていなかったからだ。次に新しい家を建てる上での火災保険加入それを順守するルールを作らなければ、消火しない」といっているようなものだ。その間にその家事は消火活動にあたろうと準備している人の家に延焼しつつあるのだ。一方的に彼ら(欧州)を責めるのは酷ではあるが何とかしてもらわないと困る。しかし加盟国の数が17と多く、これらをまとめることは非常に難しいのも事実だ。中国政府と中国の地方政府との関係は欧州諸国の関係に類似するが、欧州当局(EU並びにECB)は中国中央政府ほどの強制力を持ち合わせない。小職は依然として最悪の事態(第二のリーマンショック)は回避されると信じているが、このような背景を鑑みると最悪の事態が発生する可能性が「ゼロ」ではない。具体的には金融商品の価格リスク(含む商品価格の下落リスク)発生の可能性が以前よりも高まっていると考えられる。本邦企業は発生の可能性が低いが実際にそれが起きた場合への備えを行うべきだろう。
商品相場の下落は資産価値の悪化を映じて、金融機関の与信姿勢に変化をもたらす可能性がある。前倒しの資金調達並びに保有資産の下落リスク(資産圧縮や、価格下落リスクの回避)への対応を意識しておく必要があるのではないだろうか。これは「相場急落時のパニックを回避するための手段」である。何もなければそれこそ良かった、という話だ。「備えあれば、憂いなし」。先達の言葉は時代や相場環境が変わっても、価値有るものである。


※尚、当ブログでの商品市況概況、雑感のアップデートは1日遅れとなっています。
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