統計速報(8月10日分)

 昨日の米在庫統計は稼働率の回復はあったものの、そもそもの在庫水準の低さもあって結局原油・製品ともブルな内容であったといえる。目下の最大の材料は稼働率の改善、というよりも株価の調整に伴う負の資産効果で需要がどれだけ減少するか、であるが、今のところはガソリンを除けば明確な需要の減少は観測されていない。となると引き続き供給サイドが問題にならざるを得ないが、原油OPECの生産が抑制傾向にあることや稼働率が徐々に回復していることからやはりブルであり、石油製品は自国の生産で需要をまかないきれていない事から輸入頼みの状態になんら変わりはなく、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要は今のところなかろう。では個別に少し詳しく見てみよう。
 原油は、生産が殆ど横ばいの中、稼働率が市場予想通りの回復となったこと、輸入が減少したことから予想を大きく上回る在庫の減少となった。稼働率各地区ごとまちまちであったが、P1、P3の稼働率の回復は思わしくない。この時期のP1、P3の5年平均の稼働率は各々92.4%、91.6%であり、今週の85.5%、92.8%を大きく下回っている。製品在庫の水準が高ければ問題にならないのだろうが、石油製品在庫の水準を考えれば明らかに稼働率は低いと言わざるを得ない。また、原油の輸入もP5以外は概ね減少しており、供給再度が不安定な状態であることを示す在庫統計であった。結果、在庫は前週比▲5.2MBの大幅減少となり、FSCも20.9日と過去5年の最高水準である20.7日を上回るレベルを維持しているものの、先週から0.5日悪化、稼働率が例年通りのペースに回復した場合の在庫水準が低い事を印象付ける内容であった。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は19.3MB(▲1.48MB)と13週連続で減少している。P3の稼働率は上記の通り例年通りのペースに回復しておらず、P3の輸入が例年のペースを大幅に下回っていることもあって、減少が継続していると見られる。このコラムで指摘し続けているが、Cushing在庫の減少はWTIとBrentのネガティブスプレッド解消のための必要条件であるが、今の所期近と期先のみWTIとBrentの価格不均衡は解消に至っている。"
 ガソリンは市場予想に反し、大幅な在庫減少となった。稼働率の上昇と得率の改善に伴い生産は回復したものの、輸入が前週比減少したこともあって需要の減少はあったものの先週に引き続き▲1.1MBと大幅な在庫減少となった。生産はP1を除けば概ね過去5年の最高水準を上回る生産となっており、字面の上では供給が足りているように見える。しかしながら繰り返しコメントしてるように輸入に頼らざるを得ない状況に変わりはなく、P1の輸入が先週の過去最高レベルから▲168KBDと減少したことから、供給トータルでは前週比▲64KBDとなった。一方需要はサブプライムローン問題を背景とした負の資産効果を映じて価格下落にも関わらず減少し、9.572KBDと、過去5年の最高水準である9,697KBDを下回ってしまった。尚、需要は4週平均ベースでは9,624KBD(前週比▲35KBD)と過去5年の最高水準である9.620KBDをかろうじて上回っている状況だ。この時期の需要の2週連続の減少は極めて珍しく、久し振りに毎週の需要の動向が非常に注目されるところである。結果、FSCは21.0日と先週の水準と変わらずであったが引き続き過去5年の最低水準21.6日にも満たない。ガソリンの得率57.9%は同じ週の過去5年の最高レベルであり、更に得率を引き上げる事は困難であると見られることや、ガソリン輸入が不安定であることから、ガソリン在庫の増加のためには原油在庫を取り崩しながら稼働率を増加させて生産を増やすしかないといえ、やはり需給がタイトな状態が続くといえよう。
ディスティレート在庫は予想通り小幅な在庫増加となった。稼働率の上昇はあったものの得率が小幅低下したことから生産量は前週比略変わらず、輸入が先週から続いて▲71KBDと減少となったことに伴い、総供給量が前週比▲69KBDと減少が続いている一方、需要が直近ベースで4,158KBD(前週比+48KBD)、4週平均ベースで4,105KBD(前週比+12KBD)となったことから、トータルでは非常に小幅な+0.2MBという在庫増加となった。FSCも31.1日と前週比▲0.1日と悪化、過去5年の最低レベルである31.1日にとうとう並んでしまった。株式市場の混乱がガソリンと同様、消費の足かせになる可能性は高いが、引き続き需給がタイトな状況が継続すると見られ価格は下支えされることととなろう。