統計速報(2008年4月30日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。原油在庫の水準は輸入と稼働率に振らされる形で不安定であるが、今週は輸入の増加と稼働率の低下の2要因で在庫が増加している。但し今後もこの傾向が続くとは限らない。石油製品に関しては価格高騰にも関わらず今のところ季節性が破壊されるほどの需要の減少は観測されていない。供給環境が稼働率の影響で不安定な状況下、ドライブシーズン以降の製品不足の可能性が高まってきた。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に増加、稼働率が略横ばいであったことから市場予想を上回る大幅な在庫増加となった。これで2週連続の在庫増加であるが、この時期は在庫が積み上がる時期であるためなんら不思議はないが、従来この時期の在庫増加は比較的綺麗な増加カーブを描くのだが今年は特に輸入と稼働率が不安定なため、いびつな形での在庫の増減が続いている。生産は5,098KBD(▲3KBD)と殆ど変わらず。輸入はP3の輸入が+892KBDと増加したことから全体で+174KBDの大幅増加となった。ヒューストンシップ・チャネルの濃霧による閉鎖の影響で輸入量が大幅に減少すると見ていたが、影響は軽微であった。P3以外の地区では前週比マイナスとなっているが全体では10,215KBDと、同じ時期の過去5年に於ける最高水準10,035KBDを大きく上回っている。結果、総供給量は15,313KBD(前週比+171KBD,+1.2MBの在庫増加要因)となった。クラックマージン、特に原油価格の高騰と需要の前年比での減少が続いているガソリンのクラックマージンの回復が遅れており、稼働率は先週こそ+4.2%の大幅な回復となったが今週は▲0.2%と悪化した。稼働率は地区毎に各々P1から、+7.5%、+0.3%、▲0.7%、▲10.4%、▲1.7%となっている。稼働率の悪化は+0.3MBの在庫増加要因となる。供給量増加、処理量の減少で在庫は前週比で+1.5MBの+3.9MB(先週の在庫増加は+2.4MB)となるが、略計算どおりの前週比+3.8MBの319.9MB(過去5年平均レベル316.4MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+0.7%であるが、今週は+1.2%となった。FSCは在庫増加・処理量減少で前週比+0.3日の21.3日となった。過去5年の平均である20.5日を上回る水準を維持しており、引き続き在庫に不十分感はない。もし例年通りの稼働率になるとすれば19.7日と過去5年の平均レベルに満たない水準の在庫しかない。不安定な稼働率と輸入状況に振らされながら在庫の状況も不安定であるがすこしずつ需給はタイトになってきているようだ。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は19.3MB(前週比+148KB)となった。"

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率が小幅悪化、得率が大幅に改善、需要も減少したことから前週比での在庫減少幅は縮小したものの市場予想までは達しなかった。生産は+97KBDの8,964KBDと先週から増加。稼動率は小幅悪化したものの得率が+0.8%の大幅改善となった影響が大きい。輸入は前週比+379KBDと大幅に増加し1,385KBDとなった。この時期の過去5年の最高水準である。需要が底堅く推移する中、稼働率の回復がままならないため輸入に頼らざるを得ない状態となっていることが浮き彫りとなった。P1で前週比+406KBDと増加した影響が大きい。結果、総供給は10,349KBD(前週比+476KBD、前週比で+3.3MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,257KBD(前週比▲35KBD、過去5年平均9,038KBD、▲0.2MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,189KBD(前週比▲26KBD)となった。この4週平均の需要増加率(▲0.4%)は例年(+0.2%)を下回るレベル。また依然として需要の前年比割れは継続しており、14週連続の前年比マイナスとなった。米需要は2月以降前年比で明確に減速している状態であるが、引き続き季節性は維持しており需要の減少は当初懸念したほど深刻なものにはなっていない。しかしながら景気減速と輸送需要は連関性が高いため、引き続き当該指標(需要)は注意してチェックしていきたい。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比+3.1MBの▲0.1MBの在庫減少(先週の減少▲3.2MB)となるが、実際は▲1.5MBの在庫減少となった。在庫減少増加の内訳は、Conventionalを除く全てのガソリンが減少しており、Blending Componentの減少が▲2.0MBと顕著。この時期はドライブシーズン入りしていることもあり在庫が増加する時期であるが、3月以降在庫減少が顕著になり、依然として回復するに至っていない。この結果、FSCは22.8日と先週から▲0.1日悪化し、過去5年の平均水準である22.4日に迫りつつある。このペースで稼働率の改善が思わしくないと、価格上昇にも関わらず需要が堅調であることからピークシーズンであるドライブシーズン中に在庫が不足、需給が逼迫する「需要低迷下の需給逼迫」という状況になる可能性が高い。先週に続き市場予想比・絶対値ベースでもブルな統計であった。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫増加となった。稼働率が小幅悪化したが得率が2週連続で改善したことから生産が増加、輸入も略横ばいであったことから需要の減少もあって市場予想比大幅な在庫増加となった。生産は、稼働率が悪化したが、得率が+0.9%と先週と打って変わって大幅に改善したことから4,238KBD(+122KBD)と大幅な生産増加となった(過去5年の最高水準である4,117KBDを上回る)。製品生産の内訳はULSDの生産が▲9KBDと減少、ヒーティングオイルが+131KBDと増加している。輸入は前週比+12KBDの273KBDと横ばい。この結果、総供給は4,511KBD(前週比+134KBD、+0.9MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,257KBD(前週比▲24KBDの、+0.2MBの在庫増加要因)と、前週比▲0.6%と例年の+0.3%の需要増加率を下回った。在庫減少の内訳を見るに、今週はULSDの消費が減少したとみられる。全体のバランスでは前週比+1.2MBの▲0.2MB(先週の在庫増加は▲1.4MB)となるところであるが、計算とは裏腹に+1.1MBの在庫増加となった。総在庫は105.8MBとなり、過去5年平均レベル107.5MBを下回るレベルでの推移が続いている。ここ数週間の動きを見るに、クラックスプレッドの拡大の影響で(ガソリンは低迷)生産が堅調であることからい徐々に在庫が増加してきている。在庫増加の内訳はULSDが+1.7MBの大幅増加となる一方、ディーゼルが▲0.1MB、ヒーティングオイルが▲0.5MBとなった。FSCは24.9日(前週比+0.4日)と過去5年の最低水準である24.5日をかろうじて上回るレベルである。今週の統計は予想対比・絶対値ベースともベアな内容であったが、在庫水準や需給状況を見るに中期的には依然として需給がタイトな状況であることには変わりはない。