統計速報(9月19日分)

 昨日の米在庫統計は原油ブル、製品ややベアな内容であった。原油は製油所の稼働率がマージン悪化に伴い思うように回復していないものの、輸入が回復していないことから大幅な減少となった。ガソリンはピークシーズンが終了、低い在庫で何とかシーズンを乗り切ったようだ。結局ハリケーン等の突発事象がなければ、20日程度の在庫でも問題ない、ということなのだろう(昨年と同じ)。今後はディスティレートが石油製品の主役となろう。ただし、こちらも絶対水準・FSCともに過去最低水準であり、加えて稼働率の改善が思わしくない中、自国の生産で需要をまかないきれていない状態であることから輸入頼みの状態が続く見込みであり、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要はなかろう。サブプライムローン問題の波及で今週の統計は需要の減少が顕著であったが、FOMCでの大幅な利下げの影響で株価も回復しており、購買意欲減少に一定の歯止めをかけるものと見られる。では個別に少し詳しく見てみよう。
 原油は、先週の輸入大幅減少から多少回復したものの市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。ここ数週間、原油在庫は輸入量の増減と稼働率の変動に振らされる展開となっている。通常であれば製品在庫の水準が低いことから稼働率が上がりやすい地合いに入ってもおかしくないのだが、季節的にクラックマージンが縮小し易く、生産者が稼働率の引き上げを逡巡しているようだ。生産は前週比小幅減少し、5,039KBD(▲90KBD)、輸入はP1の輸入量が回復したことから9,805KBD(+242KBD)と増加、総供給量は15,627KBD(前週比+152KBD)と小幅増加、稼働率は89.6%とP1,P3、P5で悪化し、過去5年平均程度の稼動となった(稼働率の悪化に伴う在庫増加は+1.2MB)事から、先週の大幅減少からは減少幅が縮小したものの在庫は前週比▲3.9MBの318.8MBとなった。FSCは在庫減少と稼働率の低下で20.4日と先週と変わらず。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18,337KBD(▲1,680KBD)と大幅な減少となっている。

 ガソリンは市場予想に反し、小幅な増加となった。生産が得率の改善によって増加した一方、需要の減少が顕著だったためだ。稼働率の上昇、得率の低下によって生産量は9,070KBD(前週比+159KBD)、輸入は略横ばいであったことから、総供給が10,008KBD(前週比+154KBD、前週比で1.1MBの在庫増加要因)となった上、需要が例年を上回るペースで減少(単週ベースで9,247KBD(過去5年の最高水準9,453KBD)、4週平均ベースで9,461KBD(過去5年の最高水準9,543KBD)、4週平均ベースの需要減少は前週比▲1.3%と、例年の▲0.9%を上回る。1.0MBの在庫の増加要因)であったことから、市場予想に反し在庫増加となった。FSCは20.2日と先週から0.3日分増加したが、引き続き過去5年の最低水準20.4日に満たない。この低い在庫水準は昨年のレベルと同じ(昨年が過去5年の最低)であり、去年もこの程度の在庫水準でピークシーズンを乗り切っており、ハリケーン等の災害がなければなんとなかる在庫水準であると言える。しかし、マージンが縮小する中、輸入に頼らざるを得ない状況が継続しており、今年は例年よりもハリケーンが頻繁に発生していることをかんがみればガソリン供給は安定しておらず、引き続き需給がタイトな状態が続いていると結論できる。但しピークシーズンは終了しており、季節要因的に需要が回復する4週間後までは不冴えな相場が続くことになろう。

 ディスティレート在庫は市場予想を上回る増加となった。稼働率の悪化と得率の小幅な改善(+0.1%)を受けて生産が4,105KBD(前週比▲25KBD)、輸入も307KBD(前週比▲45KBD)と減少したことから、総供給が4,421KBD(前週比▲70KBD)と減少したものの、需要も例年を上回るペースで減少したこと(単週ベース4,030KBD(前週比▲37KBD)、4週平均ベース4,128KBD(前週比▲65KBD))であったことから、1.6MBの大幅な在庫増加となった。これによりFSCも32.8日と先週から0.9日増加した。しかしながらこの水準は引き続き過去5年平均である34.3日を下回るレベルであり、十分とはいえない。ガソリン同様、例年通りであれば4週間後から需要が増加するため、それまでに在庫を積み増せるかどうかがポイントとなるが、原油高騰に伴うマージン悪化によってそれは難しかろう。