統計速報(2月27日発表分)

 昨日の米在庫統計はまちまち。原油稼働率が改善したものの、稼働率自体の水準が低いことから引き続き在庫の増加が継続している。ガソリンは輸入の増加と需要の減少で市場予想を上回る在庫増加となった。寒波の襲来が伝えられているディスティレートは大幅な在庫減少となった。引き続き需要は堅調で、小売価格の上昇はあるも消費は堅調である。本当に景気が悪化しているのか?と疑いたくなるほど需要は堅調だ。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が減少、稼働率が改善したことから先週よりも在庫増加幅が縮小した。市場予想を上回る在庫増加となっている。これで在庫の増加は7週連続となった。生産は5,044KBD(+10KBD)と小幅増加。原油生産は非常に安定している。輸入はP3以外の地区全てで減少したことから全体で9,958KBD(前週比▲144KBD)となった。結果、総供給量は15,002KBD(前週比▲134KBD,▲0.9MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP1で+10.0%と、先週の▲12.8%から大幅に回復、その他の地区では規模の大きなP3で+2.0%と回復したことから全体でも+1.2%と予想を上回る稼働率の回復となった。ただしこの時期の稼働率の水準としては過去5年の最低の84.7%となっている。原油価格の高騰に伴う調達コストの上昇により、原油処理がスローダウンしたままである。尚、稼働率の低下パターンは歴史的暖冬となった昨年と略同じである。稼働率の改善は+1.5MBの在庫増加要因となる。供給量減少、処理量の増加で在庫は前週比で+0.2MBの+4.4MB(先週の在庫増加は+4.2MB)となるが、実際は在庫は前週比+3.2MBの308.5MB(過去5年平均レベル299.3MB)となった。在庫の増加率は例年は横ばいであるが今週は、前週比+1.1%の大幅な増加となった。となりの+0.4%を大きく上回っている。今回の在庫統計では稼働率が改善したもののP3で+3.3MBの大幅な在庫増加となっている。FSCは在庫増加・処理量増加により前週比▲0.1日の20.9日と略横ばいであった。過去5年の平均である20.0日を上回っている。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は16.9MB(前週比+240KB)と2週連続で減少している。原油を消費している国は米国だけではないが、少なくとも米国の原油供給は足りていない、とはいえないレベルである。

 ガソリン在庫は予想を上回る増加となった。生産は稼働率の改善はあったものの得率が▲1.3%と大幅に低下したことから全体で8,778KBD(前週比▲62KBD)と小幅現象となった。生産は引き続き過去5年の最高水準(8,640KBD)を上回っている。輸入はP1で大幅に増加し全体で前週比+527KBDの1,354KBDとなった。この水準は文句なく同じ時期の過去5年の最大である。結果、総供給は10,132KBD(前週比+465KBD、前週比で+3.3MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,027KBD(前週比+26KBD、過去5年平均8,800KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,045KBD(前週比▲80KBD)となった。小売価格の上昇が継続しているが、価格の高騰にも関わらず依然として米国の需要は強い。ただしこの需要増加率(+0.3%)は例年(+0.4%)と略同じ増加率である。ただし米景気の悪化観測を背景に、徐々に消費に影響を与え始めると考えられることから、来週の需要にも注目したい。以上を合計するとバランス上は在庫は+4.1MBの在庫増加(先週の増加+1.0MB)となるのだが、実際は+2.4MBの在庫増加となった。在庫増加の内訳は、RBOBを除く全てのガソリンが増加している。この結果、FSCは25.8日と先週から+0.2日改善。過去5年の最高水準である25.1日を上回る状態が続いており、ガソリンに関しては供給がタイトという感じでもない。供給の減速は依然として確認されていないが今週の統計はベアな内容であったと言える。

 ディスティレート在庫は先週に続き、予想を大きく上回る在庫減少となった。稼働率の改善はあったが得率が大幅に悪化、輸入も減少したことから、需要が前週比大幅な減少となったものの結局市場予想を上回る在庫減少となった。生産は、稼働率が悪化したことにより3,888KBD(▲122KBD)と大幅に減少。製品生産の内訳はULSD、ディーゼルオイルの生産が減少している一方、灯油の生産が増加している。輸入は前週比P1,P3で減少したことから全体で▲187KBDと大幅な減少となった。米州のみならず欧州の一部でも寒波の襲来による気温低下の影響が出ているようだ。この結果、総供給は4,082KBD(前週比▲309KBD、前週比▲2.2MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は前週比+0.2%の4,360KBD(前週比▲0.1MBの在庫減少要因)と、例年の▲0.4%を大きく上回る増加となった。ただし先週のエラー値とも思える需要の増加(+629KBD)が今週の統計では減少(▲576KBD)しており、例年のペースにもどりつつある。全体のバランスでは前週比で▲2.3MBの▲6.7MB(先週の在庫減少は▲4.4MB)となるところであるが、計算を大きく下回る▲2.6MBの在庫減少となった。但し事前の予想▲2.2MBを上回る在庫減少となった。総在庫は120.0MBとなり、過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳は、先週に続いてULSDが▲1.3MB、ヒーティングオイルが▲1.3MBとなった。先週同様、気温低下の影響でP1、P3地区での在庫減少が顕著であった。FSCは27.5日(前週比▲0.7日)の大幅低下となった(過去5年の平均水準26.1日は上回っている)。今回の統計もディスティレートは明確に市場予想比ブルな内容であった。