昨日の米在庫統計はまちまち。原油は市場予想比ブルであり、ディスティレートはヒーティングオイル需要の増加を受けてやはりこちらも市場予想比ブル、ガソリンはベアな内容であった。前週比で見た場合の需要は価格高騰にも関わらず堅調であるが、前年と比較した場合には需要が減少しており(特にディスティレートは昨年は暖冬であったにも関わらず輸送需要が堅調であり、気温の低い今年よりも需要が旺盛であった)、やはり景気は前年比では悪化している可能性が高いことを示唆する内容であった。但し市場予想では比較的ブルな内容であったといえよう。詳しく見てみよう。
原油は生産が横ばい、輸入が減少、稼働率が改善したことから在庫減少となった。原油在庫は8週ぶりに減少に転じることとなった。生産は5,050KBD(+6KBD)と小幅増加。原油生産は引き続き非常に安定している。輸入はP1,P4以外の地区全て大幅に減少したことから全体で9,437KBD(前週比▲521KBD)となった。結果、総供給量は14,487KBD(前週比▲515KBD,▲3.6MBの在庫減少要因)となった。稼働率は比較的規模の大きなP1で+6.9%、P5で+2.6%となったことから全体でも85.9%(前週比+12%)と、例年の稼働率回復のペースを大きくアウトパフォームした。製品価格の上昇と製品の最終需要が前年比マイナスではあるものの例年のペースで増加していることやクラックスプレッドの改善を背景に、稼働率は急速に回復している。稼働率の改善は▲1.5MBの在庫減少要因となる。供給量減少、処理量の増加で在庫は前週比で▲5.1MBの▲1.9MB(先週の在庫増加は+4.2MB)となるが、実際は在庫は前週比▲3.1MBの305.4MB(過去5年平均レベル300.3MB)となった。在庫の増加率は例年は+1.2%と増加に転じる時期であるが、今週は前週比▲1.0%と減少した。著しく高い原油価格とイールドカーブのバックワーデーション継続が、在庫の積み上げを阻害しているようだ。FSCは在庫減少・処理量増加の両要因により前週比▲0.5日の2049日と略横ばいであった。過去5年の平均である20.3日を上回るレベルであり、今のところ危機的なレベルではない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は16.1MB(前週比▲824KBD)と減少に転じている。例年通りの在庫積み上げが進むと見られていたが、今回の原油統計は明らかに予想対比ブルな内容であったといえる。
ガソリン在庫は予想に反し在庫増加となった。生産は稼働率の改善および得率の改善(+0.9%)を受けて全体で9,042KBD(前週比+264KBD)と小幅増加となった。生産は引き続き過去5年の最高水準(8,668KBD)を上回る水準を維持している。輸入はP1で先週+527KBDの大幅増加となった反動で▲554KBDと減少に転じ、800KBDとなった。先週は過去最高水準の輸入を記録していたが、今回は一転して過去5年水準を下回る結果となった。結果、総供給は9,842KBD(前週比▲290KBD、前週比で▲2.0MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,065KBD(前週比+39KBD、過去5年平均8,812KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,071KBD(前週比+26KBD)となった。 今回の統計で確認された需要増加率(+0.4%)は例年(+0.7%)を下回り、4週平均需要も前年比で▲0.8%とサブプライム問題発覚後6ヶ月経った2月からやはり減少に転じている(6週連続で前年割れの状態)。その観点からすれば前年比で需要が減少していることは間違いなさそうだ。やはり米景気の悪化観測を背景に、徐々に消費に影響を与え始めていると考えられるが、価格高騰にも関わらず比較的需要が堅調であると考えてよさそうだ。但し引き続き景気のバロメーターとなる輸送需要の推移には注目していきたい。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.2MBの在庫増加(先週の増加+2.4MB)となるのだが、実際は+1.7MBの在庫増加となった。在庫増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが増加している。この結果、FSCは25.8日と先週から+0.1日改善。過去5年の最高水準である25.2日を上回る状態が続いており、ガソリンに関しては供給がタイトという感じでもない。供給の減速は依然として確認されていないが今週の統計もベアな内容であったと言える。
ディスティレート在庫は先週に続き、再び予想を大きく上回る在庫減少となった。稼働率の改善、得率の改善(+0.4%)により生産が大幅に増加したが、輸入が横ばいで需要が堅調であったことから結局市場予想を上回る在庫減少となった。生産は、稼働率・得率が改善したことにより4,005KBD(+117KBD)と大幅に増加。製品生産の内訳はULSDが増加、ディーゼルが小幅減少、ヒーティングオイルの生産が減少している。一方、輸入は生産の増加したULSDの輸入が減少(▲27KBD)、生産の減少したヒーティングオイルが小幅増加(+19KBD)しており、全体で▲8KBDと2週連続で減少した。米州のみならず欧州の一部でも寒波の襲来による気温低下の影響が出ているようだ。この結果、総供給は4,191KBD(前週比+109KBD、前週比+0.8MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,398KBD(前週比+38KBD、▲0.3MBの在庫減少要因)、直近需要が4,322KBD(前週比+73KBD)となり、4週平均ベースの需要増加率は前週比+0.9%と、例年の▲1.6%を大きく上回る増加となった。ただし前年比での需要を見てみるとガソリンと同様、2月から需要が減少を始め前年比では5週連続のマイナスである。前週比で需要が増加し、前年比で需要が減少していることは、気温低下に伴うヒーティングオイル需要が需要を前週比で押し上げ、輸送需要が減少していることを示唆していると考えられる。全体のバランスでは前週比で+0.5MBの▲2.1MB(先週の在庫減少は▲2.6MB)となるところであるが、計算を若干上回る▲2.3MBの在庫減少となった。但し事前の予想▲1.9MBを上回る在庫減少である。総在庫は117.6MBとなり、引き続き過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳は、ULSDが+0.5MB、ヒーティングオイルが▲2.2MBとなった。上記のとおり、気温低下に伴う需要増加が前週比での需要を押し上げているが前年比では需要が減少している可能性があるといえる(実際、気温低下の影響でP1、P3地区での在庫減少が先週に続き顕著であった)。FSCは26.7日(前週比▲0.9日)の大幅低下となった(過去5年の平均水準26.0日は上回っている)。今回の統計もディスティレートは明確に市場予想比ブルな内容であった。