統計速報(2009年2月19日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ブル、石油製品ニュートラル〜ブルな内容であった。原油は明らかに石油製品の在庫水準を適正レベルに維持するオペレーションの影響のバッファとなっており、総じて増加・減少が毎週交互に来る状態となっている。原油で特筆すべきは、漸くクッシングの在庫が減少に転じたことであろうか。この動きが来週以降も続けばWTIの極端なコンタンゴ化には歯止めが掛かるものと期待されるが、消費が明らかに回復してきてるわけではないのでもう少し時間がかかることとなろう。石油製品で特筆すべきは需要の回復である。昨年は季節性を無視した需要の減少が見られたが、足元季節性を回復しつつ前年比の需要減少幅が縮小してきている。特にディスティレート需要は前年比プラスを回復するに至った。まだ先々について楽観するのは禁物であるが、「極端なクライシスの可能性」が低下し始めていると考えている。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少、稼働率が再び改善したことから先週から大幅に在庫の増加幅を減らし、結局前週比マイナスとなった。生産は5,323KBD(▲4KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は8,793KBD(▲859KBD)とP2、P5で増加したもののその他の地区で減少している。この減少によって再び過去5年のレンジを下回ることとなった。結果、総供給量は14,116KBD(▲863KBD、前週比6.0MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP3以外の全ての地区で改善しており、稼働率は全体で82.3%(+0.9%、前週比0.9MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+1.2%,+3.1%,▲1.4%,±0.0%,+3.4%となっている。石油製品の在庫水準がFSCベースで5年最高水準を越えていることから輸入量・稼働率の微妙な調整を要求されている。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低である85.1%を依然として下回っている。計算上在庫は前週比で▲6.9MBの▲2.21MBの在庫減少(先週の在庫増減は+4.7MB)となるが、実際は▲0.1MBとなった。結果、在庫水準は350.6MB(▲0.1MB)となった。在庫は稼働率が低下したP3での増加が顕著(+2.0MB)であったが、その他の地区が軒並み減少したことから全体で小幅マイナスとなっている。在庫量の変化はP1から順に、▲1.3MB, ▲0.7MB, +2.0MB, +0.4MB, ▲0.5MB となっている。FSCは24.2日(▲0.2日)と在庫・稼働率両要因で低下、先週に続き過去5年レンジの上限を上回る状態が継続している。今週は99KB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は34.9MB(▲0.1MB)と久しぶりにマイナスとなった。同地区の在庫のキャパシティ一杯まで在庫が積み上がったことが指摘されており、さすがに減少したようである。統計としては市場予想比ブルであるが、全体的にベアな状態が続いていることに変りはなく、WTIイールドカーブコンタンゴの状態が続く可能性が高い。

 ガソリン在庫は予想と反対に在庫増加となった。稼働率の改善と得率の改善に伴う生産増加が輸入の減少を相殺したためである。生産は稼働率が改善し、得率が+1.4%と改善したことから8,765KBD(+273KBD)となった。季節的に在庫が積み増しされる時期であるのだが、FSCベースでの在庫水準が高くなっていることから在庫の水準調整が行われ、例年と異なる動きがここ数週間続いている。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションが続いていると考えてよかろう。輸入は826KBD(▲492KBD)と大幅に減少。稼働率の改善に伴う生産の増加の影響もあって減少したものと見られ、過去5年の平均水準を下回った。結果、総供給は9,591KBD(▲219KBD、前週比1.5MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,591KBD(▲219KBD、前週比1.5MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで8,895KBD(+66.75KBD, 前週比0.5MBの在庫減少要因。過去5年平均 8,878KBD, 過去5年最高 9,074KBD, 過去5年最低 8,603KBD)となった。価格の低下が続いていることもあって、消費は少しずつ回復してきている可能性が高まってきた。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.7%とマイナスの状態が続いているが、先週の▲1.7%からはさらに改善している。また、需要の前週比での変化率も+0.5%と例年の+0.5%と同じになった。以上を合計するとバランス上は在庫は▲2MBの▲4.7MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲2.7MB)となるが、計算と裏腹に+1.1MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional92.6MB(▲7.2MB)、Blending125.2MB(+14.6MB)となっている。この結果、FSCは24.6日(▲0.1日)と先週から小幅低下した。しかしながら過去5年のレンジ内に留めるオペレーションが有効に機能している。最終需要動向は不況とはいいつつも落ち着いており、危機的な消費の減少には歯止めが掛かりつつあると考えてもよさそうである。統計としては需要が回復していること、適正レベルまでFSCベースの在庫が低下したことから全体としてはニュートラル〜ブルな内容であったが、市場予想比ベースではベアな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を下回る在庫減少になった。生産は稼働率が改善し得率が▲0.2%と悪化したことから4,147KBD(+5KBD)と小幅減少。生産の内訳はULSD2,893KBD(▲96KBD)、ディーゼルオイル672KBD(▲16KBD)、ヒーティングオイル582KBD(+117KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準4,091KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼル需要は堅調であり、高い生産レベルを維持している。輸入は477KBD(+331KBD)と増加し、過去5年平均水準である410KBDを回復している。この結果、総供給は4,624KBD(+336KBD、前週比2.4MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,624KBD(+336KBD、前週比2.4MBの在庫増加要因)、直近需要は4,238KBD(+69.25KBD, 前週比0.5MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,396KBD, 過去5年最高 4,674KBD, 過去5年最低 4,217KBD)と、4週平均ベース需要は前年比+1.7%ととうとう前年比プラスを回復するに至った。また前週比+1.7%(例年+2.7%)と季節性も回復している。輸送燃料消費の減少にも歯止めが掛かったと考えてよさそうである。全体のバランスでは前週比+1.9MBの+0.8MBの在庫増加(先週の在庫増減は▲1.0MB)となるところであるが、▲0.8MBの在庫減少となった。総在庫は141MB(▲0.8MB, 過去5年平均 125.0MB, 過去5年最高 136.9MB, 過去5年最低 112.5MB)となり、過去5年最高レベル136.9MBを上回っている。製品毎の在庫の内訳はULSDが85.3MB(▲0.1MB)、ディーゼルが19.6MB(▲0.4MB)、ヒーティングオイルが35.9MB(▲5.2MB)。FSCは33.2日(▲0.7日)となった。これは過去5年の最高水準である32.5日を大きく上回るレベルであり、安全水準確保を超えて在庫水準は高すぎる状態である。統計としては市場予想比ニュートラル〜ブルな内容であった。