統計速報(2008年5月14日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ニュートラル〜ブル、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。引き続き製油所の稼動の不安定さから石油製品供給が不安定である一方、製品需要が季節性を維持しつつ堅調に推移していることから石油製品にとってブルな統計が続いている。詳しく見てみよう。
 原油は生産が小幅増加、輸入が減少、稼働率が改善したことから在庫は市場予想比減少した。これで4週連続の在庫増加となったが、稼働率が低迷する中でのいびつな形での在庫の増加が続いている。生産は5,128KBD(+29KBD)と小幅増加した。輸入はP1以外の全ての地区で減少したことから全体で▲695KBDの大幅減少となり全体で9,933KBDと、同じ時期の過去5年の平均水準10,076KBDとなった。価格高騰とドル安の進行、不安定な稼働率が輸入動向を不安定なものにしているようだ。結果、総供給量は15,061KBD(前週比▲666KBD,▲4.7MBの在庫減少要因)となった。稼働率はドライブシーズンに入っていることもあり、さすがに上昇している。稼働率は地区毎に各々P1から、+9.8%、±0.0%、▲1.2%、+15.5%、+4.0%となっている。稼働率の改善は悪化は▲2.0MBの在庫減少要因となる。供給量減少、処理量の増加で在庫は前週比で▲6.7MBの▲1.0MB(先週の在庫増加は+5.7MB)となるが、実際は前週比+0.2MBの325.8MB(過去5年平均レベル319.7MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+0.2%であるが、今週は+0.1%と略例年通りの動きとなった、が稼働率が安定しない中結果的にそうなっただけである。FSCは在庫増加・処理量増加で前週比▲0.4日の21.4日となった。過去5年の平均である20.4日を上回る水準を維持しており、稼働率の回復が思わしくない中、原油在庫に関してはややゆとりがあると言えるが、もし例年通りの稼働率になった場合20.3日分の在庫しかなくとうとう過去5年平均レベルを下回ることとなった。電力障害等の障害があることも事実であるが、稼働率が回復した場合には十分な在庫水準があるとはいえない。また、価格高騰が在庫積み上げの足かせになっていることも対処理量ベースの在庫水準を低く安定化させる材料となっていることは意識しておきたいところ。先週までは比較的ゆとりのある在庫であったが、石油製品需要が価格高騰にも関わらず比較的堅調さを維持していることから徐々に需給がタイトになる可能性が高まってきた。その一方でイールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は20.4MB(前週比+200KB)となった。

 ガソリン在庫は予想と裏腹に在庫減少となった。稼働率の改善に伴い生産が増加したが輸入が減少したことや需要が比較的堅調に推移したことから予想に反して在庫減少となった。生産は+227KBDの8,904KBDと、過去5年の最高レベルに回復している。得率が前週比+0.4%と改善したことも影響している。輸入は前週比▲579KBDと先週から大幅に減少した。結果、総供給は9,819KBD(前週比▲352KBD、前週比で▲2.5MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,265KBD(前週比+1KBD、過去5年平均9,074KBD、在庫増減要因とはならず)、直近需要ベースで9,343KBD(前週比+32KBD、過去5年平均9,107KBD)となった。先週の統計ではこの4週平均の需要増加が2月以来プラスとなったが、恐らく価格高騰に伴う買い控えの買いによる増加であったと思われ、今週は再び前年比マイナスとなった。米景気の急速な悪化懸念が薄らいでいることから前年比では再びマイナスになってものの総じて消費は堅調との印象を受ける。とはいうものの引き続き需要動向は細心の注意を払ってチェックして行く必要があろう。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲2.5MBの▲1.7MBの在庫減少(先週の減少+0.8MB)となるが、略計算どおりの▲1.7MBの在庫減少となった。ひとえに輸入減少が在庫減少の主因となった。在庫減少の内訳は、その大半がConventionalの在庫減少によるもの(▲2.3MB)である。この結果、FSCは22.7日と先週から▲0.2日悪化し、過去5年の平均水準である22.6日目前となった。このコラムでは在庫を需要で割ったForward Supply Coverを在庫の十分・不十分の判断材料としておりこの水準を上回っていれば一応在庫は足りている、判断しているがこのペースで在庫の積み上げが例年通りとならなければ、ピークシーズン中に在庫が不足、需給が逼迫する「需要低迷下の需給逼迫」という状況になる可能性が高くなってきている。今週は市場予想比ブルであり、現時点で最も重要と思われる需要も減速が見られなかったことからブルな内容であった。来週以降の統計でも需要動向に注目してゆく必要があるといえる。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫増加となった。生産が例年よりも大幅に増加していることと、輸入が増加したこと、需要が堅調であったものの市場予想を上回る在庫増加となった。生産は稼働率の改善と、得率の改善(+0.2%)により4,352KBD(+113KBD)と先週から大幅に増加した。この時期の過去5年の最高水準が4,206KBDを上回るレベルである。世界的なディスティレート需要の高まりによる在庫の減少、クラックの拡大によって生産が堅調であるようだ。輸入は前週比+29KBDの216KBDとULSDの輸入が小幅に増加。この結果、総供給は4,568KBD(前週比+142KBD、+1.0MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,202KBD(前週比+14KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)と、前週比+0.3%と例年の▲0.2%の需要増加率を上回った。全体のバランスでは前週比+0.9MBの+0.8MB(先週の在庫増加は▲0.1MB)となるところであるが、計算とは裏腹に+1.3MBの大幅な在庫増加となった。総在庫は107.1MBとなり、過去5年平均レベル108.6MBを下回るレベルでの推移が続いている。在庫増加の内訳は先週減少したULSDが+1.3MBと再び増加に転じ、ディーゼルが▲0.3MB、ヒーティングオイルが+0.3MBとなった。FSCは25.5日(前週比+0.2日)と過去5年の最低水準である24.3日を上回り、過去5年平均レベルである26.7日を下回る水準。引き続き在庫は十分な状態とはいえない。今週の統計は先週に続き予想対比・絶対値ベースともベアな内容であったが、在庫水準や需給状況を見るに先週同様中期的には依然として若干ブルな内容であったと言ってよかろう。