統計速報(2008年6月25日発表分)

 先週の米在庫統計は原油若干ベア、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。原油の需給は輸入や稼働率の状況が不安定であることから略週変わりであるが、今週は原油・石油製品とも比較的ベアな内容であった。詳しく見てみよう。

 原油は生産が小幅減少、輸入も小幅減少したものの稼働率が再び大きく低下したことから在庫は市場予想に反して増加となった。実に7週ぶりの在庫増加である。生産は5,120KBD(▲25KBD)と小幅減少した。輸入はP1,P3で+119KBD、+180KBDと増加したものの、P3で▲284KBDとなったことなどから略前週比変わらずの10,251KBD(▲8KBD)となった。これは同じ時期の過去5年の平均10,401KBDを下回る水準である。結果、総供給量は15,371KBD(前週比▲33KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)となった。稼働率は+0.5%程度の改善が予想されていたが、前週比▲0.7%の88.6%となった。最終需要動向等を睨みながら稼働率は不冴えな状態が継続しており略過去5年の最低水準で推移している(+0.9MBの在庫増加要因)。尚、過去5年の最低87.6%を辛うじて上回る程度である。稼働率は地区毎に各々P1から、+1.6%、+0.1%、▲1.8%、▲4.3%、+0.6%となっている。供給量増加の影響で計算上在庫は前週比で▲0.7MBの▲0.5MB(先週の在庫増加は▲1.2MB)となるが、計算と裏腹に前週比+0.8MBの301.8MB(過去5年平均レベル322.5MB)となった。弊社IEAとも供給が不十分である、とのスタンスであるが、同時に足元の価格の急騰が在庫圧縮の動きに企業を走らせている可能性が高いことも事実である。FSCは在庫増加・処理量減少で前週比+0.2日の19.4日と小幅改善したが、過去5年の平均である20.2日を下回っており、このコラムで定義している十分な在庫水準は維持できていない。もし例年通りの稼働率になった場合18.5日分の在庫しかなく、過去5年の最低レベルと略同じである。はっきり言って在庫は過去にない低い水準になっているといえる。信用市場の悪化に伴う調達金利の上昇や素材価格自体の高騰によって在庫削減を余儀なくされていることに因るものであり、依然として有事のバッファがない状態にあることは懸念材料である。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は20.7MB(前週比+59KB)となった。SPR(戦略備蓄)は前週比+102KBの704.8MBとなっている。

 ガソリン在庫は予想よりも小幅な在庫減少に留まった。稼働率の悪化はあったが、得率が大幅に改善したことから生産が増加、輸入も増加したことから需要の増加はあったものの予想よりも在庫減少幅が小さかった。生産は+92KBDの9,057KBDと、過去5年の略平均レベル(8,946KBD)を回復。輸入は主要なP1で+140KBDとなったことから全体で前週比+120KBDの1,162KBDとなった。結果、総供給は10,219KBD(前週比+212KBD、前週比で+1.5MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,281KBD(前週比▲10KBD、過去5年平均9,251KBD、+0.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,334KBD(前週比+83KBD、過去5年平均9,320KBD)となり、略過去5年平均レベルを辛うじて回復している。引き続き需要は前年比マイナス(▲2.7%)の状態が続いているが今週の統計に関しては、前週比▲0.1%(例年▲0.2%)と、例年を小幅上回った。このコラムでは、「ガソリンの需要の減少が季節性を無視して減少している可能性」を指摘していたが、徐々にそういう状態になりつつあるようである。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比+1.4MBの+0.2MBの在庫増加(先週▲1.2MB)となるが、計算とは裏腹に▲0.2MBの小幅な在庫減少となった。在庫増加の内訳は、その大半がRBOB(+1.7MB)である。この結果、FSCは22.5日と先週と変わらずであった。ここ数週間過去5年の平均水準近辺で推移しているが、今週の統計でも過去5年平均(22.7日)を下回っている。「価格高騰に伴う在庫圧縮の動き」が見られると考えられることから、過去のデータと照らし合わせて単純に在庫が足りない、とは言いがたいことも事実であるものの在庫の減少は「価格高騰時の消費者の買い急ぎ」を誘発することから、価格のアップサイドへのセンシティビティを高めるため引き続き注意せねばならない。今回は数値の上ではニュートラルな内容であったと考えている。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫増加となった。生産が得率の大幅な改善で増加、輸入の減少を略相殺、需要が減少したことから先週に続き市場予想を上回る在庫増加となった。生産は稼働率が悪化したものの得率が改善(+1.2%)したことから4,588KBD(+149KBD)と先週から大幅な増加となった。生産の内訳はULSDの生産が大幅に増加(+1490KBD)したことが生産増加の要因となった。輸入は前週比▲150KBDの107KBDとなった。欧州地区のディスティレート需要が旺盛であることから輸入が進んでおらず、例年の305KBDのみならず過去5年の最低である255KBDをも下回ってしまった。この結果、総供給は4,695KBD(前週比▲1KBD、在庫増減要員とはならず)となった。4週平均需要は4,062KBD(前週比▲10KBD、過去5年平均4,022KBD、+0.1MBの在庫増加要因)、直近需要は4,040KBD(前週比+30KBD、過去5年平均4,019KBD)と、引き続き過去5年を上回る水準は維持しているが、需要前年比割れの状態(前年比▲2.3%)が続いている。尚今週については前週比ベースの需要増加率は▲0.2%と例年の▲0.6%を大きく上回っている。全体のバランスでは前週比+0.1MBの+2.7MB(先週の在庫増加は+2.6MB)となるところであるが、略計算どおりの+2.8MBの在庫増加となった。総在庫は119.4MBとなり、過去5年平均レベル115.3MBを上回るレベルで推移している。在庫増加の内訳はULSDが+0.7MB、ディーゼルが+0.7MB、ヒーティングオイルが+1.4MB。FSCは29.4日(前週比+0.8日)と過去5年平均水準である28.7日を回復した。ディスティレートに関しては一時期の危機的な在庫不足の状態を脱し、漸く安定感のある在庫水準に戻ってきたといえる。今回の統計も先週に続き、素直に在庫が増加したことを受け、ベアな内容であったと言える。