統計速報(2009年2月4日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、石油製品ニュートラルな内容であった。原油は生産が増加、輸入も増加し、著しいイールドカーブコンタンゴを背景にした在庫の積み増しの動きが見られたようである。その一方で石油製品の在庫水準も高い。しかし今週の統計で特筆すべきは在庫の水準ではなく、石油製品の需要動向であろう。ガソリン需要は例年と異なり、前週比増加、ディスティレートは例年と異なり前週比減少という、例年とは異なる動きが見られたためだ。結局のところガソリンの消費量の方が大きいため、「輸送需要全体」ではプラスであるのだが、景気の悪化に伴い輸送需要に何かしらの変化が出始めている可能性があるため、今後、注意して見て行きたい。詳しく見てみよう。
 原油は生産が大幅に増加、輸入も増加したことから稼働率が上昇したものの、市場予想を大幅に上回る在庫増加となった。生産は5,235KBD(+190KBD)と略「過去5年の平均水準」を回復するに至った。最低水準近辺で」。輸入は10,037KBD(+329KBD)とP5での増加が顕著である。この増加により輸入も略過去5年平均レベルを回復している。結果、総供給量は15,272KBD(+519KBD、前週比3.6MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP5以外で改善しており、稼働率は全体で83.5%(+1.3%、前週比1.3MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+4.6,+0.5,+1.4,+1.6,▲1.4%となっている。価格水準の低下とイールドカーブの極端なコンタンゴ化等、在庫の積み増しが行い易い環境にあるものの最終需要の弱さと在庫水準自体の高さから、製油所の稼働率は過去5年の最低である85.0%を依然として下回っている。計算上在庫は前週比で+2.4MBの+8.59MBの在庫増加(先週の在庫増減は+6.2MB)となるが、実際は+7.2MBとなった。結果、在庫水準は346.1MB(+7.2MB)となった。在庫は輸入が減少し、稼働率が大幅に上昇したP1以外の全ての地区で大幅に増加している、在庫の変化はP1から順に、▲0.2MB, +1.2MB, +4.6MB, +0.0MB, +1.5MB となっている。FSCは23.5日(+0.2日)と在庫要因で上昇、先週に続き過去5年レンジの上限をさらに大きく上回ってしまった。今週は723KB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は34.3MB(+0.8MB)と増加が続いており、イールドカーブコンタンゴ化にさらに寄与することとなろう。統計としては明確にベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想を下回る在庫増加にとどまった。生産が稼働率が改善したものの得率が低下したことから小幅増加に留まり、輸入が大幅に減少、需要が大幅に回復したためである。生産は稼働率が改善し、得率が▲0.6%と悪化したことから8,679KBD(+19KBD)となった。季節的に在庫が積み増しされる時期であるため、FSCベースでの在庫水準が高くなっているが、総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションが続いている状態。輸入は829KBD(▲325KBD)と横ばい。過去5年平均を再び下回った。結果、総供給は9,508KBD(▲306KBD、前週比2.1MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,508KBD(▲306KBD、前週比2.1MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで8,766KBD(+6.25KBD, 前週比0.0MBの在庫減少要因。過去5年平均 8,883KBD, 過去5年最高 9,090KBD, 過去5年最低 8,474KBD)となった。価格の下落が継続していたが、オバマ政権誕生以降、「極端な景気悪化に対する懸念」が後退しているのか、需要は底堅い推移となっている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲3.5%とマイナスの状態が続いているが、先週の▲4.4%からは大きく改善している。また、需要の前週比での変化率も+0.1%と例年の▲0.9%と異なる動きとなった。以上を合計するとバランス上は在庫は▲2.2MBの▲2.3MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲0.1MB)となるが、計算を上回る+0.4MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional96.0MB(▲10.2MB)、Blending123.4MB(+13.8MB)となっている。この結果、FSCは25.1日(+0.0日)と先週から変わらず。過去5年の最高水準である24.7日からの乖離幅が大きくなっており引き続き、本コラムで定義する「安全レベル」を大きく上回る水準まで在庫が積み上がっている状態。最終需要動向は不況とはいいつつも比較的落ち着いており、政府の相次ぐ経済・金融政策の影響で資金繰りへの過度な懸念が若干後退していること、価格水準自体が低くなっていること、季節的に在庫が緩やかに増加する時期であること、から徐々に在庫水準が切り上がってきている。「供給の途絶」に伴う価格の急騰リスクは殆どないと見ておくべきだろう。統計としては需要が大きく回復していることから市場予想比、若干ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は略予想通りの在庫減少となった。生産は稼働率が改善し得率が▲0.4%と悪化したことから4,169KBD(▲1KBD)と小幅増加。生産の内訳はULSD3,067KBD(+76KBD)、ディーゼルオイル708KBD(+19KBD)、ヒーティングオイル394KBD(▲96KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準3,968KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼル需要は比較的堅調であり、高い生産レベルを維持している。輸入は177KBD(▲87KBD)と減少し、過去5年最低水準である277KBDを再び下回った。この結果、総供給は4,346KBD(▲88KBD、前週比0.6MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,346KBD(▲88KBD、前週比0.6MBの在庫減少要因)、直近需要は4,054KBD(▲24.5KBD, 前週比0.2MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,212KBD, 過去5年最高 4,299KBD, 過去5年最低 4,146KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲4.6%と大幅な悪化が続いている。また前週比▲0.6%(例年+1.9%)と、季節性を無視した動きとなった。この次期に需要が減少したのは直近では2008年のみであり、燃費を考慮してディーゼル車の使用が増えていることを鑑みると、ガソリンの需要が増えているものの輸送需要の減少懸念、という意味で若干気がかりである。全体のバランスでは前週比▲0.4MBの▲1.4MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲1.0MB)となるところであるが、▲1.4MBの在庫減少となった。総在庫は143MB(▲1.4MB, 過去5年平均 129.8MB, 過去5年最高 140.0MB, 過去5年最低 121.5MB)となり、過去5年最高レベル140.0MBを上回っている。製品毎の在庫の内訳はULSDが84.1MB(▲5.1MB)、ディーゼルが19.8MB(▲14.0MB)、ヒーティングオイルが38.7MB(+9.5MB)。FSCは35.2日(▲0.1日)となった。これは過去5年の最高水準である33.7日を大きく上回るレベルであり、安全水準確保を超えて在庫水準は高すぎる状態である。統計としては市場予想比ニュートラルな内容であった。