統計速報(2009年2月11日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、石油製品ニュートラル〜ブルな内容であった。原油の在庫増加は明らかに石油製品の在庫水準が高すぎるために、生産調整が行われたため、在庫が積み上がったようである。原油のポイントはクッシング在庫がタンクのキャパシティの限界まで積みあがってしまったことであろう。このままであるとWTIの極端なコンタンゴ状態は継続する可能性が高い。石油製品に関しては、ガソリン・ディスティレートの需要が例年の動きと異なり、回復し始めている。前年比▲3.0%〜▲4.0%程度の需要減少が確認されていたのだが、今週は▲1.0%台半ばまで回復している。景気が悪化し余り良い話はないのだが徐々に需要に底打ち感が出てきたことは喜ばしい事と言って良いと思う。詳しく見てみよう。

 原油は生産が小幅増加、輸入が大幅に減少したが、稼働率が再び大幅に低下したことから、市場予想を大幅に上回る在庫増加となった。生産は5,327KBD(+92KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は9,652KBD(▲385KBD)とP1、P4で増加したものの、稼働率の低下の影響などで殆どの地区で減少している。ただし略過去5年平均レベルを維持している。結果、総供給量は14,979KBD(▲293KBD、前週比2.1MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率は全ての地区で悪化しており、稼働率は全体で81.6%(▲2.4%、前週比2.4MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲4.9,▲0.3,▲2.3,▲2.5,▲1.1%となっている。石油製品の在庫水準がFSCベースで5年最高水準を越えていることから生産調整が入ったようだ。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低である84.3%を依然として下回っている。計算上在庫は前週比で+0.3MBの+7.51MBの在庫増加(先週の在庫増減は+7.2MB)となるが、実際は+4.7MBとなった。結果、在庫水準は350.8MB(+4.7MB)となった。在庫は輸入が大幅に減少したP5以外の全ての地区で大幅に増加している、在庫の変化はP1から順に、+0.4MB, +0.2MB, +3.6MB, +0.7MB, ▲0.2MB となっている。FSCは24.4日(+0.9日)と在庫・稼働率両要因で上昇、先週に続き過去5年レンジの上限をさらに大きく上回ってしまった。今週は324KB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は34.9MB(+0.6MB)と増加が続いており、同地区の在庫のキャパシティ一杯まで在庫が積み上がったことが指摘されている。より一層、WTIイールドカーブコンタンゴ化が進捗するだろう。統計としては明確にベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想と反対に大幅な在庫減少となった。稼働率の大幅な低下が得率の小幅改善を完全に相殺、需要も先週に続き増加したためである。生産は稼働率が悪化し、得率が+0.1%と改善したことから8,492KBD(▲187KBD)となった。季節的に在庫が積み増しされる時期であるのだが、FSCベースでの在庫水準が高くなっていることから在庫の水準調整が行われ、例年と異なる動きとなった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションが続いていると考えてよかろう。輸入は1,318KBD(+489KBD)と大幅に増加。稼働率の低下に伴い、増加したものと見られ、過去5年の最高水準を上回った。結果、総供給は9,810KBD(+302KBD、前週比2.1MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,810KBD(+302KBD、前週比2.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで8,828KBD(+62KBD, 前週比0.4MBの在庫減少要因。過去5年平均 8,850KBD, 過去5年最高 9,074KBD, 過去5年最低 8,528KBD)となった。米景気対策の影響(現在その評価は低いようだが)極端な景気悪化に対する懸念が後退しているのか、需要は底堅い推移が続いている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲1.7%とマイナスの状態が続いているが、先週の▲3.5%からは大きく改善している。また、需要の前週比での変化率も+0.7%と例年の▲0.3%と異なる動きが先週から続いている。以上を合計するとバランス上は在庫は+1.7MBの+2.0MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.4MB)となるが、計算と裏腹に▲2.7MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional93.6MB(▲16.5MB)、Blending123.1MB(▲1.7MB)となっている。この結果、FSCは24.6日(▲0.5日)と先週から低下。過去5年の最高水準である25.3日を再び下回る所謂適正レベルに落ち着いた。最終需要動向は不況とはいいつつも比較的落ち着いており、例年の動きとは異なり在庫の減少が見られている。統計としては需要が回復していること、適正レベルまでFSCベースの在庫が低下したことから、市場予想比ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を若干上回る在庫減少に留まった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.5%と改善したことから4,142KBD(▲27KBD)と小幅減少。生産の内訳はULSD2,989KBD(▲78KBD)、ディーゼルオイル688KBD(▲20KBD)、ヒーティングオイル465KBD(+71KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準4,037KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼル需要は比較的堅調であり、高い生産レベルを維持している。輸入は146KBD(▲31KBD)と減少し、過去5年最低水準である339KBDを下回った。この結果、総供給は4,288KBD(▲58KBD、前週比0.4MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,288KBD(▲58KBD、前週比0.4MBの在庫減少要因)、直近需要は4,169KBD(+115.25KBD, 前週比0.8MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,329KBD, 過去5年最高 4,596KBD, 過去5年最低 4,194KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲1.6%と先週の▲4.6%から大きく改善した。また前週比+2.8%(例年+3.0%)と、先週不一致であった季節性を回復している。先週、燃費を考慮してディーゼル車の使用が増えていることを背景に輸送需要が減少しているのでは、と考えていたが今のところその心配はなさそうである。しかしながら引き続き、ガソリンとあわせて輸送需要はチェックしていく必要があろう。全体のバランスでは前週比▲1.2MBの▲2.6MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲1.4MB)となるところであるが、▲1.0MBの在庫減少となった。総在庫は142MB(▲1.0MB, 過去5年平均 127.3MB, 過去5年最高 136.3MB, 過去5年最低 118.3MB)となり、過去5年最高レベル136.3MBを上回っている。製品毎の在庫の内訳はULSDが85.3MB(+8.9MB)、ディーゼルが19.6MB(▲1.4MB)、ヒーティングオイルが36.6MB(▲14.7MB)。FSCは34.0日(▲1.2日)となった。これは過去5年の最高水準である32.4日を大きく上回るレベルであり、安全水準確保を超えて在庫水準は高すぎる状態である。統計としては市場予想比ニュートラル〜ベアな内容であった。