統計速報(2009年2月25日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ニュートラル、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。原油は引き続き石油製品在庫を主語にして、過去5年のレンジにFSCベース在庫を調整する動きが継続。石油製品はRBOBの需要が増加していることから予想に反し大幅な在庫減少となった。原油で特筆すべきは、クッシングの在庫が2週連続減少に転じたこと。これに伴いWTIのフロントマンスには上昇圧力がかかることになろう。底なしの価格下落に歯止めが掛かりつつある内容であると考える。詳しく見てみよう。
 原油は生産が小幅減少、輸入も小幅減少したが、稼働率が再び低下したことから在庫増加となった。但し総供給の減少で市場予想は下回っている。生産は5,300KBD(▲23KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は8,769KBD(▲24KBD)とP3以外の地区で増加している。この減少によって再び過去5年のレンジを下回ることとなった。結果、総供給量は14,069KBD(▲47KBD、前週比0.3MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP4、P5で大幅に改善したが、P1、P2、P3で大幅に低下している。稼働率は全体で81.4%(▲1.1%、前週比1.1MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲9.6%,▲0.6%,▲1.7%,+4.6%,+4.7%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されている。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低である83.5%を依然として下回っている。計算上在庫は前週比で+0.8MBの+0.63MBの在庫増加(先週の在庫増減は▲0.1MB)となるが、実際は+0.7MBとなった。結果、在庫水準は351.3MB(+0.7MB)となった。在庫は輸入量が大幅に減少したP3で顕著であったが、同時に輸入量が大幅に増加したP5での増加が顕著であり、全体で小幅プラスとなっている。在庫量の変化はP1から順に、+0.3MB, ▲0.0MB, ▲0.6MB, +0.2MB, +0.9MB となっている。FSCは24.5日(+0.3日)と在庫・稼働率両要因で上昇、先週に続き過去5年レンジの上限を上回る状態が継続している。今週は229KB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は34.5MB(▲0.4MB)と2週連続のマイナス。同地区の在庫減少はイールドカーブのフラット化に寄与するため、WTIの期近への上昇圧力がかかると見ている。統計としては市場予想比若干ブルであるが、全体的にベアな状態が続いていることに変りはない。
 ガソリン在庫は予想と反対に大幅な在庫減少となった。稼働率の悪化はあったものの得率が大幅に改善したことによって生産が増加したが、消費が大幅に増加したためである。生産は稼働率が悪化し、得率が+1.9%と改善したことから8,937KBD(+172KBD)となった。季節的に在庫が積み増しされる時期であるのだが、FSCベースでの在庫水準が高くなっていることから在庫の水準調整が行われ、例年と異なる動きがここ数週間続いている。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションが続いていると考えてよかろう。輸入は805KBD(▲21KBD)と小幅減少。得率の改善に伴う生産の増加の影響もあって減少したものと見られ、過去5年の平均水準を下回った。結果、総供給は9,742KBD(+151KBD、前週比1.1MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,742KBD(+151KBD、前週比1.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで8,985KBD(+90KBD, 前週比0.6MBの在庫減少要因。過去5年平均 8,926KBD, 過去5年最高 9,121KBD, 過去5年最低 8,666KBD)となった。価格の低下が続いていることもあって、消費は少しずつ回復してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.1%とマイナスの状態が続いているが、先週の▲0.7%からさらに改善している。また、需要の前週比での変化率も+1.0%と例年の+0.5%よりも早いペースでの需要増加となっている。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.4MBの+1.5MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.1MB)となるが、計算と裏腹に▲3.3MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional92.2MB(▲3.1MB)、Blending122.3MB(▲20.6MB)となっている。この結果、FSCは24.0日(▲0.6日)と先週から低下し、過去5年のレンジ内に納まった。恐らく来週もガソリン得率を引き上げ、原油在庫を減らすオペレーションが採られるものと見ている。最終需要動向は不況とはいいつつも落ち着きを取り戻しつつあり、底なしの下落トレンドから反転する可能性が高まってきた。統計としては需要が回復していること、適正レベルまでFSCベースの在庫が低下したことから全体としてはブルな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫は市場予想を下回る在庫減少になった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.8%と改善したことから4,213KBD(+66KBD)と小幅増加。生産の内訳はULSD3,105KBD(+212KBD)、ディーゼルオイル683KBD(+11KBD)、ヒーティングオイル425KBD(▲157KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準4,010KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼル需要は引き続き堅調で、高い生産レベルを維持している。一方冬場の終焉を控えてヒーティングオイルの生産は小幅減少している。輸入は282KBD(▲195KBD)と増加し、過去5年レンジを下回った。この結果、総供給は4,495KBD(▲129KBD、前週比0.9MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,495KBD(▲129KBD、前週比0.9MBの在庫減少要因)、直近需要は4,171KBD(▲67.5KBD, 前週比0.5MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,445KBD, 過去5年最高 4,659KBD, 過去5年最低 4,244KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲4.1%と再び先々週の減少率に戻ってしまった。また前週比▲1.6%(例年+1.4%)と例年と異なる動きになっており、再び輸送燃料消費動向に注意せねばならなくなった。やはり消費環境は不安定なのだろう。全体のバランスでは前週比▲0.4MBの▲1.2MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲0.8MB)となるところであるが、+0.9MBの在庫増加となった。総在庫は142MB(+0.9MB, 過去5年平均 122.1MB, 過去5年最高 135.6MB, 過去5年最低 111.4MB)となり、過去5年最高レベル135.6MBを上回っている。製品毎の在庫の内訳はULSDが86.6MB(+9.2MB)、ディーゼルが19.4MB(▲1.1MB)、ヒーティングオイルが35.6MB(▲1.9MB)。FSCは34.0日(+0.7日)となった。これは過去5年の最高水準である31.9日を大きく上回るレベルであり、原油等の戻りも鑑みればクラックスプレッドに縮小圧力がかかる材料となろう。統計としてはベアな内容であった。