統計速報(2009年4月15日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンブル、ディスティレートブルな内容であった。ガソリンのFSC水準の低さから、ディスティレート在庫が積みあがっているものの稼働率を引き下げることができずにいたが、ドライブシーズン前にガソリンの生産は略目処が立ったと見られ、今週以降は稼働率を引き下げ石油製品生産の調整が行われると予想される。その一方、原油の需要は落ち込むと見られ、輸入・生産とも不冴えな展開が続くこととなろう。一方で万一の場合に備え、SPRの積み増しが継続的に行われていることがポイントである(企業が在庫圧縮、万一ハリケーン等で原油が調達できなかった場合に備える)。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入も横ばい、稼働率が予想通り低下したことから大幅な在庫増加となった。生産は5,482KBD(+13KBD)と過去5年の平均水準を維持。輸入は9,391KBD(+59KBD)とP1で大幅に増加したが、P2,P4,P5で減少したことから略先週と変わらず。ベネズエラなどの輸出が増加していることが指摘されているが、今週に関しては5年平均を下回った。結果、総供給量は14,873KBD(+72KBD、前週比0.5MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP3以外のすべての地区で悪化している。稼働率は全体で80.4%(▲1.8%、前週比1.8MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲4.0%,▲3.4%,+0.6%,▲9.9%,▲1.8%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されており、今回の稼働率の低下は略予想通り。計算上在庫は前週比で+2.3MBの+3.97MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.6MB)となるが、計算を上回る+5.7MBとなった。結果、在庫水準は366.7MB(+5.7MB)となった。在庫はすべての地区で増加している。在庫量の変化はP1から順に、+1.2MB, +1.3MB, +0.7MB, +0.9MB, +1.6MB となっている。FSCは25.8日(+0.9日)と略変わらず。過去5年レンジの上限を上回る状態が継続しており、原油供給は十分と言える。今週は1.3MB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は29.2MB(▲0.7MB)と減少、イールドカーブのフラット化に寄与することとなろう。統計としてはベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率の低下によって得率が改善したものの生産量が減少、輸入が横ばい、需要も略横ばいであったことから在庫減少となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+0.8%と改善したことから8,913KBD(▲53KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。ここ数週間の生産増加の影響で、FSCは、過去5年レンジの上限に徐々に近づいてきていることから今週は稼働率を引き下げて生産量を減少させると見ていたが略予想通りとなった。輸入は1,074KBD(+68KBD)と小幅増加。結果、総供給は9,987KBD(+15KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,987KBD(+15KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,048KBD(▲2.75KBD, 前週比0.0MBの在庫増加要因。過去5年平均 9,164KBD, 過去5年最高 9,363KBD, 過去5年最低 9,034KBD)となった。経済対策の影響等もあり、消費は比較的順調に回復をしてきたが、ここ数週間の価格上昇の影響などもあって、徐々に鈍化してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲1.7%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率は±0.0%(例年+0.5%)となった。比較的ガソリンの需要は堅調であると考えているが、景気回復の足取りが重い中での価格上昇が季節性を意識した消費の動きを阻害し始めていると予想される。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.1MBの+0.8MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.7MB)となるが、略計算どおりの▲0.9MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional86.9MB(+6.9MB)、Blending127.9MB(▲15.5MB)となっている。この結果、FSCは23.9日(▲0.1日)と先週から低下し、過去5年の上限レンジを辛うじて下回るレベル。最終需要動向は景気対策の影響等で徐々に回復してきているのだが、ここ数週間の価格上昇の影響もあって一服、という感じである。統計としては市場予想比ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は略市場予想どおりの在庫減少となった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.7%と改善したことから3,951KBD(+33KBD)と小幅増加。生産の内訳はULSD2,870KBD(▲26KBD)、ディーゼルオイル644KBD(+40KBD)、ヒーティングオイル437KBD(+19KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均水準を若干上回るレベル。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は144KBD(▲17KBD)と減少し、過去5年レンジを下回る状態が継続している。この結果、総供給は4,095KBD(+16KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,095KBD(+16KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)、直近需要は3,854KBD(+12KBD, 前週比0.1MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,224KBD, 過去5年最高 4,352KBD, 過去5年最低 4,022KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲10.7%と大幅な悪化、また前週比+0.3%(例年+0.9%)と増加。ドライブシーズン入り目前であるが、寒波の影響がなくなる中需要は強くはなさそうである。全体のバランスでは前週比+0MBの▲3.3MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲3.4MB)となるところであるが、▲1.2MBの在庫減少となった。総在庫は140MB(▲1.2MB, 過去5年平均 109.9MB, 過去5年最高 118.1MB, 過去5年最低 103.9MB)となり、過去5年最高レベル118.1MBを大きく上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加を始めるのだが、既に高い水準まで在庫がつみあがっており、むしろ在庫圧縮をせねばならない状態である。ガソリンのFSCが低かったことから生産調整が困難であったが、FSCが上昇したこともあって当面は稼働率を引き下げ、ディスティレート在庫も圧縮の動きが見られると考えている。製品毎の在庫の内訳はULSDが82.7MB(▲5.0MB)、ディーゼルが20.6MB(+1.4MB)、ヒーティングオイルが36.3MB(▲4.6MB)。FSCは36.2日(▲0.4日)となった。これは過去5年の最高水準である28.5日を大きく上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としては市場予想比ブル、統計自体は引き続きベアな内容であった。