統計速報(2009年4月1日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンベア、ディスティレートベアな内容であった。石油製品需要、特にディスティレート需要が寒波が弱まった影響で大幅に減少している中、石油製品在庫が積み上がっているためである。同時に石油製品在庫の積みあがりは原油の余剰を誘発し、価格を押し下げる効果をもたらす。同時にSPRが積み増しされており、「企業の在庫圧縮に伴うクライシス時の供給懸念を排除」するための対応を米政府が前倒して実施している可能性が指摘される。今後は、ガソリンのFSCが5年レンジの上限に差し掛かっていることや需要の回復が緩慢であることを鑑み、来週以降は稼働率を引き下げて石油製品在庫の水準調整が行われるものと予想している。詳しく見てみよう。
 原油は生産が小幅増加、輸入が増加、稼働率が低下したことから3週連続で大幅な在庫増加となった。生産は5,480KBD(+48KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は9,554KBD(+170KBD)とP5で減少。輸入量は在庫水準の高さを映じて過去5年のレンジの下限での推移となった。結果、総供給量は15,034KBD(+218KBD、前週比1.5MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP1、P2で大幅に改善したものの、その他の地区で悪化した。稼働率は全体で81.7%(▲0.3%、前週比0.3MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+7.0%,+1.4%,▲0.3%,▲2.0%,▲5.9%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されている。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低水準を年初以降、一度も上回っていない。計算上在庫は前週比で+1.9MBの+5.17MBの在庫増加(先週の在庫増減は+3.3MB)となるが、計算を下回る+2.8MBとなった。結果、在庫水準は359.4MB(+2.8MB)となった。在庫は稼働率が大幅に改善したP1、P2で小幅減少しているもののその他の地区で、特にP3での在庫増加が顕著であった。在庫量の変化はP1から順に、▲0.4MB, ▲0.1MB, +2.9MB, +0.2MB, +0.2MB となっている。FSCは25.0日(+0.3日)と在庫・稼働率両要因で上昇、過去5年レンジの上限を上回る状態が継続しており、原油供給は十分と言える。今週は1.7MB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は30.9MB(▲0.9MB)と減少、イールドカーブのフラット化に寄与することとなろう。統計としてはベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想を大きく上回る在庫増加となった。稼働率が低いが得率が改善、輸入が増加、需要が横ばいであったことから市場予想と裏腹に在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+0.3%と改善したことから8,733KBD(+10KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。ここ数週間の生産増加の影響で、FSCは、過去5年レンジの上限に徐々に近づいてきており、需給が緩和する傾向にある。輸入は1,211KBD(+75KBD)と減少。結果、総供給は9,944KBD(+85KBD、前週比0.6MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,944KBD(+85KBD、前週比0.6MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,038KBD(▲19.75KBD, 前週比0.1MBの在庫増加要因。過去5年平均 9,060KBD, 過去5年最高 9,210KBD, 過去5年最低 8,890KBD)となった。経済対策の影響等もあり、消費は比較的順調に回復をしてきたが、ここ数週間の価格上昇の影響などもあって、徐々に鈍化してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.7%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率は▲0.2%(例年の+0.3%)となった。比較的ガソリンの需要は堅調であると考えているのだが、季節性を意識した消費の動きは緩慢だ。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.7MBの▲0.4MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲1.1MB)となるが、計算を上回る+2.2MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional85.9MB(▲12.0MB)、Blending129.6MB(+25.8MB)となっている。この結果、FSCは24.0日(+0.3日)と先週から上昇し、過去5年の上限レンジに近づいてきた。最終需要動向は景気対策の影響等で徐々に回復してきていたのだが、ここ数週間の価格上昇の影響もあって一服、という感じである。統計としてはベアな内容であった。

 ディスティレート在庫も市場予想とは反対に在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し得率が+1.3%と改善したことから3,882KBD(+169KBD)と増加。生産の内訳はULSD2,914KBD(+170KBD)、ディーゼルオイル581KBD(▲60KBD)、ヒーティングオイル387KBD(+59KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均水準3,756KBDを若干上回るレベル。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は263KBD(▲186KBD)と大幅に減少し、過去5年平均を下回った。この結果、総供給は4,145KBD(▲17KBD、前週比0.1MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,145KBD(▲17KBD、前週比0.1MBの在庫減少要因)、直近需要は3,772KBD(▲27.75KBD, 前週比0.2MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,215KBD, 過去5年最高 4,446KBD, 過去5年最低 3,849KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲10.8%と大幅な悪化、また前週比▲0.7%(例年▲0.8%)と春先以降、大幅に減少している。欧米の寒波の影響が弱まる中、季節性を無視した需要の減少が見られている。全体のバランスでは前週比+0.1MBの▲1.5MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲1.6MB)となるところであるが、+0.2MBの在庫増加となった。総在庫は144MB(+0.2MB, 過去5年平均 113.6MB, 過去5年最高 124.2MB, 過去5年最低 104.5MB)となり、過去5年最高レベル124.2MBを上回っている。この時期、ディスティレート在庫は減少するのだが、年明け以降増加を続けている。ガソリンのFSCが低く、得率の引き上げで対応しているが60.6%はこの時期の過去最高水準であり、「欲しくないがディスティレートが生産されてしまう」状態が続いているようだ。但し、FSCは徐々に5年レンジの上限に近づいており、来週以降は徐々に稼働率が低下、生産が調整されると見ている。製品毎の在庫の内訳はULSDが86.3MB(+3.0MB)、ディーゼルが19.7MB(▲3.6MB)、ヒーティングオイルが38.1MB(+2.1MB)。FSCは38.2日(+0.3日)となった。これは過去5年の最高水準である29.3日を大きく上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としてはベアな内容であった。