統計速報(2009年6月17日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ブル、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。原油は生産の減少を輸入の増加が相殺、稼働率が高止まったことから先週に続いて在庫減少となった。ガソリンは需要が比較的堅調であることからFSCが低下、ディスティレートは引き続き高い在庫水準が続いており、需要も不冴えなことから著しく在庫水準が高い状態が続いている。今後は需要が景気底打ちに伴い本当に回復するかどうかがポイントとなるが、ガソリン需要は戻っているものの、ディスティレート需要が回復してない(特にULSD)。同時に価格の上昇ピッチが早すぎることから、当初の予想通り一時夏場に息切れとなる可能性が高いと予想している。メインシナリオである秋口から冬場にかけて景気が二番底を付けに行く動きに、製品需要がどうフォローしていくかがポイントとなる。詳しく見てみよう。

 原油は生産が減少、輸入が増加、稼働率が変わらずであったことから先週に続き市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,273KBD(▲85KBD)と過去5年の平均水準を維持。輸入は9,037KBD(+67KBD)とP2,P5で輸入が増加、P1,P3の減少を相殺した。結果、総供給量は14,310KBD(▲18KBD、前週比0.1MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP5以外のすべての地区で改善しているが、P5の稼働率低下幅が大きかったことから略相殺されてしまい、稼働率は全体で85.9%(+0.1%、前週比0.1MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+7.8%,+1.7%,+0.7%,+1.5%,▲7.9%となっている。計算上在庫は前週比で▲0.2MBの▲4.57MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲4.4MB)となるが、略計算どおりの▲3.9MBとなった。結果、在庫水準は357.7MB(▲3.9MB)となった。在庫は輸入が減少し、稼働率が回復したP3での減少が顕著であり、P1,P5以外の地区で大幅な減少となっている。在庫量の変化はP1から順に、+0.3MB, ▲1.3MB, ▲2.9MB, ▲0.1MB, +0.1MB となっている。FSCは23.6日(▲0.3日)と悪化。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるオペレーションは継続していると見られるが、原油在庫の水準は引き続き例年よりも高い水準に張り付いている。今週はSPRは小幅増加。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は29.0MB(▲0.0MB)と小幅減少。統計としては市場予想比ブルな内容であった。

 ガソリン在庫は増加した。得率の改善に伴う生産の増加と輸入の増加が、需要の増加を相殺したためである。生産は稼働率が改善し、得率が+1.2%と改善したことから9,131KBD(+180KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。輸入は1,090KBD(+218KBD)と大幅に増加し、過去5年平均を回復。結果、総供給は10,221KBD(+398KBD、前週比2.8MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで10,221KBD(+398KBD、前週比2.8MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,263KBD(+30.5KBD, 前週比0.2MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,344KBD, 過去5年最高 9,475KBD, 過去5年最低 9,169KBD)となった。新型インフルエンザ問題が北半球では下火になったことから、ドライブシーズン中でもあり需要は回復してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.6%とマイナスの状態が続いているが、需要の前週比での変化率は+0.3%(例年+0.1%)となっている。今後需要の増加が継続するか否かは、景気回復の初期段階における価格上昇に消費者がどれだけついてこれるかに拠ると考えているが、現在の経済環境は決して価格の高騰を容認できる環境にあるとはいえないため、価格がこのままの水準であれば需要は夏場のピークを境に減少する可能性が高いと考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は+2.6MBの+1.0MBの在庫増加(先週の在庫増減は▲1.6MB)となるが、計算を上回る+3.4MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional79.4MB(▲3.2MB)、Blending123.4MB(+27.0MB)となっている。この結果、FSCは22.1日(+0.3日)と先週から上昇しているが、引き続き過去5年の上限レンジを下回っている。需要がこのまま堅調に推移するかどうかは繰り返しになるが今後の価格水準次第、ということになるが、予想以上に需要の回復はしっかりしているとの印象は否めない。統計としては需要が堅調である点からブルな内容が継続しているが、市場予想比ベアな内容であった。

 ディスティレート在庫は小幅な在庫増加となった。生産は稼働率が改善し得率が▲0.1%と悪化したことから3,915KBD(▲18KBD)と減少。生産の内訳はULSD2,935KBD(▲105KBD)、ディーゼルオイル530KBD(▲48KBD)、ヒーティングオイル450KBD(+135KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準近辺。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされているが一方でガソリン生産を継続せねばならないことから生産調整が全く追いついていない。輸入は191KBD(+29KBD)と横ばいで、過去5年平均を下回っている。この結果、総供給は4,106KBD(+11KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,106KBD(+11KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)、直近需要は3,512KBD(▲64.25KBD, 前週比0.4MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,091KBD, 過去5年最高 4,165KBD, 過去5年最低 4,036KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲14.4%と大幅な悪化が続いており、前週比ベースでも▲1.8%(例年±0.0%)と冴えない状況が続いている。全体のバランスでは前週比+0.5MBの+0.2MBの在庫増加(先週の在庫増減は▲0.3MB)となるところであるが、+0.3MBの在庫増加となった。総在庫は150MB(+0.3MB, 過去5年平均 115.4MB, 過去5年最高 122.8MB, 過去5年最低 107.7MB)となり、過去5年最高レベル122.8MBを遥かに上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加を始めるのだが、既に高い水準まで在庫が積み上がっており在庫圧縮をせねばならない状態である。これはドライブシーズンであることからガソリンのFSCを高く維持するオペレーションを取らねばならず、結果的にULSD、ディスティレート在庫の水準を高止まりさせることとなっている。よって更に稼働率を引き下げにくい環境になっておりしばらくは、ディスティレート価格の下押し材料となることが予想される。製品毎の在庫の内訳はULSDが88.5MB(▲7.2MB)、ディーゼルが20.9MB(+4.8MB)、ヒーティングオイルが40.6MB(+4.5MB)。FSCは42.7日(+0.9日)となった。これは過去5年の最高水準である30.4日をはるかに上回るレベルであり、明らかに多すぎである。この在庫の圧縮を進める必要があろう。統計としては引き続きベアな状況を脱していない。


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