統計速報(2009年6月24日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ブル、石油製品ベアな内容であった。稼働率の改善に伴い原油在庫は大幅な減少となったが、石油製品はこの動きとは逆で当然在庫水準が増加することとなる。また、今回の統計で気をつける必要があるのが、先週回復したと期待していた需要に減少の兆しが見えることだろう。やはり景気はまだ回復しておらずそういった中での価格上昇が消費者のマインドを冷やしているようだ。今後は引き続き、需要が景気底打ちに伴い本当に回復するかどうかがポイントとなるが、当初の予想通り一時夏場に息切れとなる可能性が高いと予想している。メインシナリオである秋口から冬場にかけて景気が二番底を付けに行く動きに、製品需要がどうフォローしていくかがポイントとなる。詳しく見てみよう。
 原油は生産が減少、輸入が増加、稼働率が大幅に上昇したことから、先週に続き市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,257KBD(▲16KBD)と過去5年の平均水準を若干下回るものの略同程度を維持。輸入は9,284KBD(+247KBD)とP5以外のすべての地区で増加に転じている。但しこの水準でも過去の最低水準よりも低いレベルである。結果、総供給量は14,541KBD(+231KBD、前週比1.6MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP3以外のすべての地区で改善しており、稼働率は全体で87.1%(+1.4%、前週比1.4MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+5.0%,+1.7%,▲1.6%,+6.3%,+4.7%となっている。計算上在庫は前週比で+0.2MBの▲3.69MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲3.9MB)となるが、略計算どおりの▲3.9MBとなった。結果、在庫水準は353.9MB(▲3.9MB)となった。在庫はすべての地区で大幅に減少している。在庫量の変化はP1から順に、▲0.1MB, ▲1.2MB, ▲0.2MB, ▲0.1MB, ▲2.2MB となっている。FSCは23.0日(▲0.6日)と悪化。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるオペレーションは継続していると見られるが、原油在庫の水準は例年よりも若干高い水準ではあるものの5年レンジに入りつつある状況。今週はSPRは0.5MB小幅増加。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は28.2MB(▲0.7MB)と減少。統計としては市場予想比ブルな内容であった。

 ガソリン在庫は大幅に増加した。得率が悪化したものの稼働率が改善したことから生産が増加、輸入が大幅に減少したものの、需要も不冴えであったことから大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が改善し、得率が▲0.2%と悪化したことから9,224KBD(+93KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。輸入は971KBD(▲119KBD)と大幅に減少し、過去5年レンジを下回るに至った。結果、総供給は10,195KBD(▲26KBD、前週比0.2MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで10,195KBD(▲26KBD、前週比0.2MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,161KBD(▲102.25KBD, 前週比0.7MBの在庫増加要因。過去5年平均 9,373KBD, 過去5年最高 9,515KBD, 過去5年最低 9,179KBD)となった。ドライブシーズン中でもあり需要は回復してきてたのだが、足許の価格急上昇もあって徐々に頭が重くなってきたようである。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲1.4%とマイナスの状態、需要の前週比での変化率も▲1.1%(例年+0.1%)となっている。今後需要の増加が継続するか否かは、引き続き、景気回復の初期段階における価格上昇に消費者がどれだけついてこれるかに拠ると考えているが、現在の経済環境は決して価格の高騰を容認できる環境にあるとはいえないため、価格がこのままの水準であれば需要は夏場のピークを境に減少する可能性が高いと考えている(先週の見方を踏襲)。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.5MBの+3.9MBの在庫増加(先週の在庫増減は+3.4MB)となるが、計算を若干下回る+3.9MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional81.6MB(+14.9MB)、Blending125.4MB(+14.4MB)となっている。この結果、FSCは22.8日(+0.7日)と先週から上昇しているが、引き続き過去5年の上限レンジを下回っている。需要がこのまま堅調に推移するかどうかは繰り返しになるが今後の価格水準次第、ということになるが、今のところは需要は堅調であるとの見方を変更する必要はなかろう。統計としてはFSCの大幅上昇もあって、ベアな内容であった。
 ディスティレート在庫は大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が改善し得率が+0.7%と改善したことから4,069KBD(+154KBD)と減少。生産の内訳はULSD2,950KBD(+15KBD)、ディーゼルオイル609KBD(+79KBD)、ヒーティングオイル510KBD(+60KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準近辺。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされているが、ガソリン生産を継続せねばならないことから略毎週在庫が思いとは裏腹に増加している。輸入は289KBD(+98KBD)と横ばいで、過去5年平均を若干上回る。この結果、総供給は4,358KBD(+252KBD、前週比1.8MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,358KBD(+252KBD、前週比1.8MBの在庫増加要因)、直近需要は3,449KBD(▲63.25KBD, 前週比0.4MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,079KBD, 過去5年最高 4,146KBD, 過去5年最低 3,992KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲15.8%と大幅な悪化が続いており、前週比ベースでも▲1.8%(例年+0.1%)と冴えない状況が続いている。全体のバランスでは前週比+2.2MBの+2.5MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.3MB)となるところであるが、+2.1MBの在庫増加となった。総在庫は152MB(+2.1MB, 過去5年平均 116.9MB, 過去5年最高 124.5MB, 過去5年最低 110.2MB)となり、過去5年最高レベル110.2MBを遥かに上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加するが、例年を遥かに上回る高い水準で増加しており在庫圧縮をせねばならない状態である。世界的にディーゼルオイルの在庫水準が高くなっており、輸送需要が減少していることが伺える。当面は、原油価格が上昇する以外にディスティレートの買い材料は存在しないと言っても言い過ぎではなかろう。製品毎の在庫の内訳はULSDが90.9MB(+16.4MB)、ディーゼルが20.7MB(▲1.1MB)、ヒーティングオイルが40.5MB(▲0.7MB)。FSCは44.1日(+1.4日)となった。これは過去5年の最高水準である44.1日をはるかに上回るレベルであることは、いまさら繰り返し言うことでもなくなってきた。統計としては引き続きベアな状況を脱していない。

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