統計速報(8月22日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油・ディスティレートベア、ガソリンブルの、まちまちな統計であった。目下の最大の材料は稼働率の改善にともなう石油製品供給の改善よりも、信用収縮問題の行方であるが、FRBの対応によって今のところ危機的な状況は短期的にでも脱したといえ、需要が押し上げられると考えていたが予想通りとなった。となると引き続き供給サイドが問題になるわけであるが、原油OPECの増産は少なくとも9月11日の定例総会までは見送られる可能性が高い事からやはりブルであり、石油製品は在庫の絶対水準・FSCともに過去最低水準であり、加えて稼働率の改善が思わしくない中自国の生産で需要をまかないきれていない状態であることから輸入頼みの状態が続く見込みであり、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要は今のところなかろう。では個別に少し詳しく見てみよう。

 原油は、生産が殆ど横ばいの中、輸入が大幅に増加し稼働率の低下もあったことから予想に反して小幅増加となった。今週の統計ではP3の輸入が6,575KBD(+659KBD)と大幅に増加したことが大きい。因みにこれだけで4.6MBの在庫増加要因となる。一方、製油所の稼働率は低下し、再び過去5年の最低水準近辺まで低下しており、ピークシーズンであるにも関わらず稼動が安定していない。製品在庫の水準が高ければ問題にならないのだろうが、石油製品在庫の水準を考えれば明らかに稼働率は低いと言わざるを得ない。以上より、在庫は前週比+0.9MBの増加となり、FSCも21.1日と過去5年の最高水準である20.3日を上回るレベルを維持している。ものの、先週から0.5日悪化、稼働率が例年通りのペースに回復した場合、それだけで2.2MBの在庫減少要因となりえるため、決して在庫水準は高いとはいえない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18.7MB(+266KBD)と久し振りに増加に転じている。主要な受け渡し地区であるP3の稼働率が安定していない事が背景にあると考えられる。
 ガソリンは市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。稼働率の低下はあったが得率が改善したため生産は略横ばいであったが、輸入が先週に続き大幅に減少したこと、需要が大幅に増加したことなどから3週連続の在庫減少となり、▲5.7MBと大幅な在庫減少となった。生産は同じ週の過去5年の最高水準を上回る生産となっており、字面の上では供給が足りているように見えるが、このコラムで指摘している通り、需要を満たすだけの生産は困難であり、輸入に頼らざるを得ない状況が続いている。一方需要はサブプライムローン問題を背景とした信用収縮に伴う価格下落等の影響で買いが入ったと考えられ、9,762KBDと、過去5年の最高水準である9,530KBDを再び上回った。尚、需要は4週平均ベースでは9,643KBD(前週比+19KBD)と過去5年の最高水準である9,610KBDを上回っている状況だ。信用収縮問題があったが、依然として消費は堅調な様子である。結果、FSCは20.4日と先週から0.6日分、減少し引き続き過去5年の最低水準21.2日にも満たない。ガソリンの得率58.1%は同じ週の過去5年の最高レベルであり、更に得率を引き上げる事は困難であると見られることや、ガソリン輸入が不安定であることから、ガソリン在庫の増加のためには原油在庫を取り崩しながら稼働率を増加させて生産を増やすしかないといえ、やはり需給がタイトな状態が続くといえよう。
 
 ディスティレート在庫は予想に反し、大幅な在庫増加となった。稼働率の低下はあったものの得率が前週比+0.7日と大幅な上昇となった事から生産が4,206KBD(前週比+106KBD)と増加、輸入もULSDを中心に428KBD(前週比+196KBD)と大幅に増加したことから、需要が直近ベースで4,288KBD(前週比+130KBD)となったものの、在庫は1.4MBの増加となった。但し、需要の増加が大きかったことからFSCも31.0日と前週比▲0.1日と小幅悪化、過去5年の最低レベルである31.2日をとうとう下回ってしまった。通常この時期からディスティレート需要は徐々に増加していくわけだが、ガソリンがピークシーズンである中、ガソリン在庫を維持しつつディスティレート在庫を積みます事は難しいといえる。